第一章
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秋祭り
そろそろ衣替えの季節になろうとしていた。制服の半袖のブラウスを見てだ。
遠山青空はだ。クラスで親友の掛布未来にこんなことを言った。
「八条神社のお祭りがあるわよね」
「ああ、秋祭りね」
「そうそう、それそれ」
青空は自分の向かい側に座る未来に言った。
「それだけれどね」
「秋祭りね。お店一杯出るわよね」
「ここぞとばかりにね。出店一杯出るわよ」
青空はそうした屋台の店が大好きだ。そこにある食べ物なら何でもだ。とりわけ焼きそばやお好み焼き、林檎飴が好きだ。それで明るい顔で言うのだった。
「そうね。お好み焼きにビールね」
「ビールって」
「お好み焼きって言ったらビールじゃない」
青空は机に右肘をつきその手の平で顎を支えながらにこりとして未来に話した。
「この組み合わせ最強でしょ」
「確かに最強だけれど」
「何かあるの?」
「あるから言うのよ」
未来は少し呆れた顔で青空に言い返した。
「私達。わかってると思うけれど」
「花も恥らう十七歳よ」
「高校生でビールって」
「いいじゃない。八条町じゃ未成年でもお酒飲めるし」
「それでもおおっぴらに飲んでいいものじゃない」
「煙草じゃないからいいじゃない」
かなり強引にだ。青空はそういうことにした。
「煙草は百害あって一理なし。それに対してお酒は」
「百薬の長っていうのね」
「万薬の長よ」
百倍にグレードアップしていた。酒はそこまでいいというのだ。
「ほら、この前授業で習った李白だってね」
「漢文の授業で出て来た詩人の?」
「お酒大好きだったらしいじゃない。飲めば飲む程詩を書けたっていうし」
「けれど先生言ってたでしょ」
未来はそのやや古風な、頬はふっくらとした感じの和風の顔を呆れさせて青空に話した。
「李白てお酒飲んで船遊びしていて」
「水面に浮かんだお月様を取ろうとしてよね」
「そのお水の中で飛び込んで死んだらしいじゃない」
酔って水の中に入れば危険なのは言うまでもない。
「そうなったらしいじゃない」
「あれ伝説でしょ」
「伝説でも何でもよ。お酒はね」
「危ないっていうのね」
「そうよ。程々ならいいけれど」
その呆れている顔で青空をじっと見てだ。未来は言うのだ。
「青空はね」
「飲み過ぎ?」
「それもかなりね」
青空の大酒の癖を指摘したのである。
「いつもいつも滅茶苦茶飲んでるじゃない」
「まあそうだけれどね」
「折角」
「折角って?」
「青空ちゃん顔可愛いのに」
青空のその顔を見ての言葉だった。見ればだ。
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