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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十三話 少女たちの挑戦
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ありがとう!」

「……」

 なのはの感謝に、フェイトはなんと返せばいいのか分からず、魔法攻撃に集中した。

「私と二人で、一気に封印!」

「うん」

 その提案にだけは短く頷き、そして、
「せーのっ!!」

 なのはの声に合わせ、二人は同時に最大火力の魔法を放った。

 強力な魔法の衝突。

 周囲に響き渡る轟音と衝撃波。

 エネルギーとのぶつかり合いは、そして巨大な爆発を起こした。

 海水は空まで昇り、雨として降りしきる。

 そしてジュエルシードのエネルギーは消し飛び、その活動を停止した。
 

「私、あなたといろんなことを話し合って、分かり合いたい」


 雲は晴れ、水飛沫が去ると、なのははフェイトと向き合っていた。

 その表情は優しさが篭った笑みに染まり、その想いを伝えていた。

 魔法に出会い、ジュエルシードに出会い、黒鐘に出会い、そして――――フェイトに出会って抱いた想い。

「――――友達に、なりたいんだ」

 その言葉に、フェイトは驚いていた。

 そして言葉が見つからず、無言でなのはを見つめた。

 優しさ、暖かさを持った彼女の笑顔は、今まで一人で戦ってきたフェイトの心に、大きな変化を与えようとしていた。

 なのはは願った。

 小さな願いかもしれない。

 いや、もしかしたら傲慢なのだろうか?

 お互いに抱える事情は大きくて複雑だ。

 その中で友達になりたいと、そんな小さな願いでさえも傲慢なのかもしれない。

 だけど、願わずにはいられなかった。

 なのはは知っているから。

 フェイトが垣間見せる片鱗を。

 まだ、彼女の核を掴んだわけじゃない。

 だけど、なのはは左手を伸ばす。

 救いたいと、心の底から思ったのだ。

「……」

 対して、フェイトは迷う。

 フェイトは拒絶してきた。

 救いを、優しさを、居場所を。

 黒鐘を裏切って、彼の仲間を傷つけてきた。

 そんな自分が、そんな彼の仲間に救われていいのだろうか?

「逃げないで」

「っ!?」

 なのはの言葉に、フェイトは再び驚かされる。
 
 まるで心を見透かされた言葉だったから。

 自分の迷いに、答えをくれたから。

「幸せになることから逃げないで。 辛くなることを選び続けないでいいの。 だって、幸せになる選択だってできるんだから」

「……けど」

 ようやく出た言葉。

 しかしそれは中途半端なためらい。

 何を選べばいいのかなんて、最初から決まっていたのに、それでも迷ってしまう。

 決意とは、心とは、なんでこうも思い通りにいかないのだろうか。
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