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真田十勇士
巻ノ百 後藤又兵衛その十二

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「それでじゃ」
「こうしてですか」
「気分が楽しい時も飲むが」
「憂いがある時もですな」
「飲む」
 そうしているというのだ。
「そして憂いを消している」
「それがしもです、どうにもです」
「憂いを持たれるな、真田殿も」
「そうした時があります」
「同じじゃな、まことに」
「そうした時の酒も有り難いですな」
「実にな」
「ううむ、どうも拙僧達は」
 清海は後藤と同じ位豪快に飲んでいる、そうしながら彼は後藤に対してこんなことを言ったのだった。その憂いに語る彼に。
「そうしたことはありませぬ」
「憂いはか」
「はい、持つこともありますが」
 それでもというのだ。
「すぐに消えてです」
「そしてか」
「楽しく飲んでおります」
「憂いがあってもすぐに消えるか」
「我等は皆です」
 十勇士全員がというのだ。
「そうした者達です」
「それはよいのう」
「この者達と共にいまして」
 幸村は清海の言葉を受けて後藤にあらためて話した。
「それがしもです」
「憂いがあってもか」
「はい、消えまする」
 その憂いがというのだ。
「この者達といますと」
「そうか、よい家臣達じゃな」
「そう思いまする」
「友であり義兄弟であり」
「実に頼りになります」
 そうだというのだ。
「それがしもこの者達にどれだけ助けられた」
「いやいや、我等の方こそです」
 清海は幸村の今の言葉に驚いて言った。
「殿にいつも助けて頂いております」
「そう言ってくれるか」
「まことのことですから」
 だからだというのだ。
「我々はです」
「そうなのか」
「どれだけ助けて頂いているか」
 幸村に仕えていてというのだ。
「我等十人嫌な思い一つしたこともありませぬ」
「拙者と共にいて」
「はい、もう二十年以上になりますが」
「そうなのか」
「殿と共にいて何一つとしてです」
 まさにというのだ。
「悪い思いをしたことがありませぬ」
「御主達はまさにじゃな」
 後藤も彼等の話を聞いて言った。
「互いが支えじゃな」
「そうなりますな」
「確かに」
 幸村も清海も共に後藤に答えた。
「それぞれの言葉を聞きますと」
「まさに」
「ではじゃ」
 後藤はまた言った。
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