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俺の涼風 ぼくと涼風
15. 二人だけの夜(2)
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「ぼくの飲みかけでごめんね」

 キャスターの上の水差しからコップ一杯の水を汲んで、ソファに座る私にゆきおがそれを渡してくれた。水はいつかの時のように、冷えてはいないが温かくもない、普通の水の冷たさだった。季節は冬で風も強く、今日は室温もそう高くないはずだが、それでも水が冷たくないのは、ゆきおの部屋にあるからだろうと私は思った。

 ゆきおがくれた水をゆっくりと飲み干す。今まで気付いてなかったが、私は相当にのどが渇いていたようだった。普通の水がこんなにおいしいものだとは知らなかった。飲み干した後ふぅっとため息をついた。心と身体の疲労が、そのため息と一緒に、少しだけ身体から出て行った。

 そんな私の様子を見守っていたゆきおもまたホッと一息つき、自分のベッドに腰掛ける。ゆきおは今、カーディガンを私に貸してくれているから、上には何も羽織ってない。肌寒いはずだが、ゆきおは平気な顔で微笑んでいた。

「落ち着いた?」
「うん」

 『よかった』とこぼすゆきおの身体を見た。やっぱり肌寒いのか、身体が少しだけカタカタと震えている。

「ゆきお」
「ん?」
「寒いのか?」
「大丈夫。僕は……ケフッ……ベッドに入るから」
「……」
「それより涼風だよ。身体も冷えきって……」

 腰掛けているベッドの中に身体を入れながら、ゆきおはそう答えてくれた。下半身はベッドに入れてるから大丈夫だろうけど、上半身は相変わらずカタカタと震えて寒そうだ。

「……涼風、寒そう」
「そお?」
「うん。寒くないの?」

 でも、自分だって寒いはずなのに、ゆきおは自分よりも私の心配をしてくれる。ゆきおはとても優しい。だから、ノムラの冷たさに凍えていた私の身体を温められるほど、暖かいんだろう。

 そんなことを考えていたら、少しだけ、身体が寒くなった。私もベッドの中で、ゆきおと一緒に温まりたい。

「ゆきお」
「ん?」
「あたいも、ちょっと寒い」
「そっか……」
「だからあたいもベッドに入れて」
「そっちにケトルあるから……って、ぇえ!?」

 大げさにうろたえるゆきおには構わず、私はソファから立ち上がってベッドに腰掛け、そしてそのまま掛け布団の中に足を滑りこませた。

「ちょ、ちょっと!? すずかぜ!?」

 両目をぐるぐると回し、両手をパタパタ振ってゆきおは慌てているが、私は気にせず、そのままベッドに潜り込んだ。顔の下半分まで潜り込み、私はゆきおの顔をジッと見つめる。

「ふぅ……」

 布団の中は思った以上に温かい。私の冷えきった身体には熱いと感じるほどの温かさだ。そして。

「す、すずかぜ……っ」

 私の肌に、ゆきおの足に触れた感触があった。ゆきおの身体は、布団よりも温かい。

「なぁゆきお
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