15. 二人だけの夜(2)
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さんも、私のことを自分の妹のように思ってくれていたのかも知れない。
……私は、みんなはあの男の命令で、私をかばっていたのだと思っていた。そう勘違いしていた。だけど、本当は違うのかも知れない。私は、みんなの優しさに守られていたのかもしれない。
――もうっ 気付くの遅いよっ
……私の耳に再び聞こえた、あの五月雨の声。もう随分と思い出すことのなかった、最期の声ではない声だ。五月雨のぷんすか声で分かった。私は、みんなを殺したと思っていたけれど……違った。私は、みんなに守られたんだ。みんなが、私を守ってくれたんだ。
結果的にそれは悲しい結末を迎えたけれど、私は、みんなを殺したんじゃない。みんなが私を守ってくれたんだという事実は、ゆきおの声と同じく、私の心に、じんわりと、優しく温かく、染みこんでいった。
ゆきお。ありがとう。やっぱりゆきおはすごいよ。ずっと私を苦しめてきた、沈んだ4人への罪悪感をかき消す手伝いをしてくれたんだから……。
「ゆきおぉ……ひぐっ……」
「ん?」
「ありがと……ゆきおのおかげで今、五月雨の言葉を思い出した」
「そっか。よかった」
私は再び、ゆきおの顔を見上げた。この空間に慣れたのか、笑顔のゆきおのほっぺたは、少し赤みが引いていた。そして私のことを、優しく、柔らかい眼差しで、ジッと見つめていた。
「それに僕は、涼風のこと、嫌いになったりしない」
「なんで? 仲間を殺したのに?」
本当はそんなこと、もう思ってないのに……私は、ゆきおに『違うよ』と言って欲しくて、ネガティブなことを言った。
ゆきおは、珍しく険しい目をして、私をキッと睨みつけて、
「……怒るよ?」
と言ってくれた。私の愚かな問いかけに、ゆきおは本気で怒ってくれた。その事実が、温まった私の身体を包み込む。私の身体はいつの間にか、ゆきおの温かさで、寒さを感じないほどに暖まっていた。
「ゴメン……へへ……」
「……ま、いっか。僕はね。僕と涼風は名コンビだと思ってるんだ」
「?」
一体何のことだろう? ゆきおと私が名コンビだと言ってくれるのは、とてもうれしいけれど……
「あたいとゆきおは名コンビ?」
「うん。言ってみれば、豆大福の豆とあんこみたいな……」
「?」
「桜餅と桜の葉っぱみたいな……」
「??」
『どうして?』と理由を問いただそうと思ったのだが、その前にゆきおは、私とゆきおの関係性を、自分が大好きなお菓子に例え始めた。確かにどれも名コンビだし、組み合わせを知ってしまうと、ただの大福や桜餅そのものでは物足りない、いわば名コンビだ。
だけど……
「今川焼きの中身と皮のような……」
「???」
「目玉焼きと、とんかつソースみたいな……」
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