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SAO−銀ノ月−
心中
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行き先を管理人さんに任せている間に、菊岡さんから添付されてきたファイルを《オーグマー》を装着して確認する。かつて菊岡さんが《死銃事件》に関わった時に、容疑者の現実世界についての詳細が纏められたファイルの一部であり、そこにはリーベのアバターが写っていて、それは彼女のリアルのことが記されている証明だった。

「……田山、愛」

「え?」

「あ、いえ、なんでも」

 田山愛。そんな目に飛び込んできた彼女の名前を、無意識に呟いていた言葉が管理人さんの耳に届き、慌てて何でもないと取り繕う。そうしてファイルに目を通していくが、本名や自分より年下だった年齢などが出来の悪い履歴書のように載っているのみで、彼女を止める手がかりとなるような情報はない。菊岡さん側からすれば、そんな情報に必要性がないのは当然だが。

「あの……」

「はい?」

 マンションと言えども高層ビルという訳ではなく、すぐにエレベーターは目的の階層へと到達する。あまり人の気配のない通路を歩いていると、聞きづらそうにしながらも管理人さんが話しかけてきた。

「その、愛ちゃんはどうかしたんですか? 色々な目にあってもあんな明るい良い子が……?」

「リー……田山さんと個人的に親しかったんですか?」

「え? ええ、はい。手前勝手ながら、親代わりだったと思っていました」

 詳しい事情を知らないらしい管理人さんに何かを語るのがはばかられ、無礼を承知で質問に質問を返すと、少しばかり呆気に取られた表情をしながらも答えてくれる。その返答には、本当に彼女のことを娘のように思っている心配の念が見て取れて、『良い人』なのだろうと確信できる。

「彼女がどうしたのか、調べるためにここに来ました」

「そうですか……愛ちゃんがいなくなってそのままですので、あまり荒らさないようにお願いします」

 そんな娘のように思っている者の帰ってくる場所を、俺のような縁もゆかりもない……なかった筈の者に踏み荒らされて気持ちの良い訳もなく、せめて態度だけは真摯に接していく。その甲斐あって何とか悪意はないというのを示せたのか、管理人さんのホッと息を吐く音とともに、目的地であった『田山』と表札が提げられた一室へと到着する。

「私は管理人室で待ってますので、終わったら鍵を返しに来てください」

「はい。ありがとうございます」

 預けられたマスターキーで解錠されたドアを開き、去っていく管理人さんの背を見ながらも、その一室へと足を踏み入れた。《死銃事件》から帰っていないということで、やはり家の中はホコリまみれになっていたが、素人が入れないほどではなく。ゴミや生物は流石に管理人さんが片付けたのか、そういった異臭がすることがないのは幸いだった。一瞬だけ躊躇したものの、土足のまま家に上
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