第五章
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「注意しろっていうんだな」
「ああ、そうした方がいいだろうな」
太平は飲み続けながら与平に話す。
「さもないと殿に成敗されるよりもな」
「ああして罰を受けるっていうんだな」
「ああした死に方はしたくないだろ」
「したい奴もいないだろ」
与平は太平に言い返した。誰がああした死に方なぞしたいかというのだ。
「あんなのはな」
「そうだろ。じゃあ戦の場でもな」
「やっちゃいけねえことはしねえっていうことでな」
「それがいいと思うけれどどうだよ」
「ああ、わかった」
その通りだとだ。与平は太平に答えた。そうしてだった。
徳利の中の酒を己の杯の中に注ぎ込みながらだ。こう太平に言ったのである。
「じゃあ。次の戦もな」
「ああ、自分で討ち取った首だけを手柄にしような」
「敵でも命は命だしな」
「粗末には扱わないでいような」
太平も与平のその言葉に頷く。そうしてだった。
二人は飲みながら戦のことを考えていた。例え戦でも命の価値は忘れまいと誓ったのである。
首に噛まれ 完
2012・7・2
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