14. 二人だけの夜(1)
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牲に、任務続行の決断をしてしまう……
『みんな……あのさ……』
私は口を開いた。那智さんが私を見た。五月雨もすがるような眼差しで私を見つめる。金剛さんと比叡さんの眼差しは、共に私の決断を促している。摩耶姉ちゃんは私に背を向け。拳をギリギリと握りこんでいる。
『任務は……』
『涼風ちゃん!!!』
不意に五月雨が私の前に飛び出し、両手を大きく広げ、大の字になって私の前に立ちふさがった。その途端……
『さみだ……』
……
…………
………………
「五月雨ぇぇえエエエ!!!」
……誰かに首を上から絞められているような息苦しさの中、私は五月雨の名を絶叫し、目が覚めた。右腕を天井に向かって精一杯伸ばし、心臓が痛いほどの鼓動を繰り返していた。胸のバクンバクンという音が、身体を通してではなく、外から聞こえる音のように感じるほど、私の心臓は今、激しくもがいていた。
「……くッ」
上に伸ばしていた右腕をだらりと下げ、私は周囲を見回した。今私が横になっているのは自分の部屋だ。海の上でも戦場でも……まして、忌まわしいあの日でもない。
上体を起こし、身体の感触を確かめる。季節はもう冬だから室温は低いはずなのに、体中はべっとりと汗をかいている。
「ハッ……ハッ……」
思い出したように息が切れた。息苦しさに拍車がかかり、浅い呼吸しか出来ない。自分が吐いた息が白い。身体が震える。あの日の恐怖が、私の身体を今、取り囲んでいる。
「……っく……ひぐっ……っく……!!」
あまりの恐怖に涙がこぼれてくる。自分の二の腕をさすり、寒さに震える身体を温めようとしたが、身体はむしろどんどん熱を失い、そしてさすればさするほど、凍えるくらい寒くなっていった。
「寒い……寒いよ……」
布団にうずくまろうと掛け布団に手をかけ、氷のように冷たい掛け布団の感触に手をひっこめた。改めて、自分の周囲を見回す。私の部屋のはずなのに、この場が何か別の空間……まるで、忌まわしいあの日の海のように感じた。
「寒いよ……寒いよ、ゆきおぉ……」
布団に潜り込むことも出来ず、身体を温めることも出来なくなった無力な私は、ゆきおの名をポツリと口にした。
「ゆきお……あたいを温めて……ゆきおぉ……」
ゆきおに会いたい。ゆきおに会って、冷えきった手を温めて欲しかった。カーディガンを肩にかけてもらって、ゆきおの暖かい笑顔に、心を温めて欲しかった。
私は、凍える身体をなんとかベッドから起こし、そのまま部屋の入り口を開いて、外履きを履いて廊下に出た。
「……ッ」
窓の外の月明かりだけが頼りの暗闇の廊下が、私の視界いっぱいに広がった。曲がり角の暗闇が恐ろしく、かすかに聞こ
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