14. 二人だけの夜(1)
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ったらしい。
『ノー……今、ワタシたちが戻っても、結果は同じネ……あの人は、やると言ったら、ためらいなくやる人デス……』
『だがな金剛! このまま進めば貴様は確実に沈む! だが戻れば、まだ希望はあるんだ! 入渠して、傷を癒やせばッ!!』
『ワタシが傷を癒やせば……他の誰かが、轟沈しマス……それに、このメンバーは鎮守府でも最強の面子ネ……ワタシたちでケリをつけないと……犠牲者が増えるだけデス……』
『……ッ』
『ワタシは……みんなに、辛い目に遭って欲しくはないのデス……』
金剛さんの冷静な反論に、那智さんも黙ってはいなかった。自らすすんで死地に赴こうとする金剛さんを止めるため、那智さんも鬼の形相で金剛さんに怒号を飛ばす。
一方、金剛さんは体中から血をだらだらと流しながら、力の篭ってない言葉で、しかし冷静に那智さんを諭す。金剛さんは、すでに死ぬ覚悟ができているようだ。その上で、自分と同じ目にあう人をこれ以上出すまいと、任務の続行を提案している。
『涼風……確かに、金剛の言う通りだ。あたしたちが任務達成出来なかったとなると、他の誰にもこの任務は出来ねえ』
『……ッ』
『クソっ……』
那智さんの隣で、今の私たちの言い合いをじっと聞いていた摩耶姉ちゃんが、歯ぎしりをしながら悔しそうに、そう吐き捨てた。真っ黒な空をにらむその姿からは、押し殺した怒りがにじみ出ている……。
私は、決断が出来ず、ただその場に立ち尽くした。このまま進めば、金剛さんは確実に轟沈するだろう。その意味では、ここで撤退する以外に選択肢はない。
だが金剛さんも言ったとおり、提督は、『やる』と言ったことは、ためらいなくやる男だ。もし私たちがこのまま撤退したとしたら、提督はきっとそのまま私たちを再度出撃させるだろう。それこそ、間宮のアイスを無理矢理私たちに……いや、私以外のみんなに必要以上に食べさせ、麻薬を摂取したかのように不自然に戦意を高揚させたのち、出撃させるはずだ。そしてその時の面子は、私たちの鎮守府で考えうる最強のメンバー……つまり、この面子。
そしてもし私たちが、金剛さんを犠牲にしてこの海域の制海権を奪取出来れば……金剛さん以外の犠牲は……きっと、ない。
伏し目がちに金剛さんを見る。金剛さんは微笑みながら、私をジッと見据えていた。肩で息をし、時折苦しそうにむせ、その度に口から血をはいているが、その澄んだ眼差しは、私をジッと見据え、そして『行きましょう』と言っていた。
『……比叡さん』
『はい……』
『あたい、どうすればいいかわかんねー……比叡さんはどう思う?』
『金剛お姉様の決断は……私の決断です』
止めてくれると思っていた比叡さんも、金剛さんの決断を肯定した。ダメだ。このままでは、私は金剛さんを犠
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