14. 二人だけの夜(1)
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とだけは、手に取るように分かった。
摩耶姉ちゃんには返事をせず、私はおぼんを持ってその場を離れた。これ以上あの空間にいると、私はみんなの優しさに包まれて泣いてしまう。それはダメだ。そんなことをしてしまえば、またゆきおに余計な心配をかけてしまう。私はそのまま台所にいる鳳翔さんに事情を説明して、朝食をそのまま持ち帰る許可をもらって、自分の部屋に戻った。
その日は一日中、自分の部屋にこもっていた。幸い私は今、ノムラ脱獄の件もあり出撃と遠征の任務は与えられてない。身を隠すという意味でも、自分の部屋に引きこもろうと思えば引きこもることも出来る。
お昼になってもお腹が減らず、夕食の時間になってもお腹が減らず……8時頃になってやっと少し空腹になってきた。私は取っておいた朝食の残りをなんとか食べ終えたが、アジの開きもご飯もたくわんも何もかも、味も香りも歯ごたえも感じることが出来なかった。とても味気ない、一人だけの夕食だった。
「……」
夕食をなんとかすべて平らげ、久々に私の目が重くなってきていることに気付いた。明日の朝に食器を食堂に持っていけるよう、準備だけを済ませ、寝巻きにも着替えず、私は床につき、部屋の明かりを消す。
「……」
豆球だけは点けておく。ノムラ脱獄の話を聞き、すべての電気を消すことに恐怖を感じたからだ。私はそのまま目を閉じて、久々に感じる心地よい眠気に身を委ねた。
………………
…………
……
『みんな……進むのデス……』
全身血塗れの金剛さんが、比叡さんの肩を借り、立ち上がって、私たちにそう告げた。その途端、騒然とする艦隊の仲間たちをよそに、金剛さんは比叡さんとともに、私のそばまで近づいてくる。金剛さんの足元の海面は、ポタポタと滴り落ちる金剛さんの血で、真っ赤に染まっていた。
『こ、金剛……さん……どうして……』
『みんな……あなたが……ゴフッ……』
口を押さえ、血を吐く金剛さんは本当に辛そうだ。大破どころの騒ぎではない。金剛さんは気を抜いた途端、足元が海に呑まれ、轟沈してしまうだろう。そのような状況の中で、金剛さんは先に進もうと言う。私は、意味が分からなかった。
『バカな金剛ッ!!』
私たちから少し離れたところで、那智さんがそう叫んでいた。那智さんは先ほど、提督に啖呵をきったばかりだ。気も少し立っていて、彼女はとても冷静ではない。
『貴様気でも触れたかッ!? このまま進めば貴様は間違いなく轟沈するぞ!!!』
『そ、そうです! 金剛さん! ここは引き返しましょう! 提督の言うことなんか……ね、涼風ちゃん!?』
五月雨も那智さんに同調した。さっきまで私の隣で顔が青ざめているだけだった五月雨は、金剛さんの惨状を見て。ハッと我に返
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