14. 二人だけの夜(1)
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食堂に向かう。最近は摩耶姉ちゃんも姿を見せない。少しさみしいが、それが『少しでも眠れるように』という摩耶姉ちゃんの気遣いであることを、私は知っている。
鏡の前で、自分の顔を見た。今日もクマがひどい。榛名姉ちゃんのおかげで、最近は自分のクマを隠す方法もわかってきた。今日もクマを隠さなきゃ……
「うう……」
お化粧しなきゃと思い、榛名姉ちゃんに教わった通りリキッドタイプのファンデーションを手に取ったが……身体が重く、どうしてもこれからお化粧しようという気になれなかった。私は、自分のひどいクマをそのまま放置し、朝ごはんを食べるために食堂に向かった。
食堂に到着し、様子を伺う。摩耶姉ちゃんはゆきおと同じテーブルで朝ごはんを食べていて、榛名姉ちゃんは金剛型のみんなで談笑しているようだ。私は何も言わず鳳翔さんから朝食が乗ったお盆を受け取り、摩耶姉ちゃんとゆきおが座るテーブルに向かう。
「ゆきおー。摩耶姉ちゃん。おはよー」
「涼風ー。おはよー」
「おはよ」
テーブルについた私を、ゆきおと摩耶姉ちゃんはいつもと変わらない調子で迎えてくれた。正直なところ、この対応はありがたい。腫れ物でも扱うようにされると、こちらも心苦しくなる。
「昨日も夜ふかし?」
「うん」
ゆきおのなんてことない問いかけに、私もなんてことない返事を返す。きっとゆきおは私の異変に気付いているが、摩耶姉ちゃんの前だからなのか、そのことに触れてこない。でも、ゆきおの優しいまなざしが物語っている。ゆきおは、私を心配し、気遣ってくれている。
手を合わせて、『いただきます』と宣言し、お味噌汁に口をつけた。カツオの出汁が効いた逸品……のはずなのだが、あまり美味しいと感じない。実もお豆腐とわかめで、決して嫌いてはないものなのに。
そのままアジの開きに箸を伸ばした。……やはり、言うほど美味しいと思えない。身は分厚くてふっくらと焼きあがっているのに……。
……美味しくない。なんだか味を感じない。私の食欲が、俄然なくなってきた。
フと、私の向かいですまし汁を飲む、ゆきおの顔が視界に入った。うっすらと目の下にクマができているように見えるが……。
「なーゆきおー」
「んー?」
「ゆきおも眠れないのか?」
ポロッと言ってしまった。これじゃあ、私自身、毎晩よく眠れないと言っているようなものだ……。でもゆきおはそこまで考えが及ばなかったようで……いや、むしろ他のことに気を取られていたようで、私に対してそのことの追求は特にせず……
「ソ、そんなことないよ?」
「そっか」
と両手をわちゃわちゃさせながら答えていた。余り触れてほしくない話題らしい。これ以上、そのことには触れないようにしよう。ゆきおも気にはなるけれど
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