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先恋
先恋〜苦しさ〜

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「前の…学校の先生?」
七瀬は驚いた様に陸太を見る。陸太は何処か不安げに頷く。二人の間にまた、沈黙が走る。
「な、何か…ごめん。」
七瀬は申し訳なさそうに俯くと呟くように言った。陸太はそれを聞き、「大丈夫。」と誰が見ても分かるような作り笑顔を浮かべ、答えた。





放課後、掃除を終えた陸太の元に、何人かのクラスメイトが集まってきた。七瀬も連れている。皆、何かしら複雑な表情だ。
「え…っと…、どうかした?」
陸太は何一つ言われては居ないものの、気不味さを感じ取り、聞く。
「あ、あのさ、陸太が言ってた瑞木≠チて…七瀬の事じゃなかったんだな。その…ろくに話も聞かないで…騒いでごめんな。」
陸太は「あぁ、その事か」という顔をした後、「全然大丈夫だよ。気にしないで。」と首を左右に振った。それを見て安心したのか、クラスメイト達の表情が和らいだ気がした。
「ありがとな。また…これからも宜しくな?」
「うん。宜しく。」
周りと笑い合いながら話をしている陸太。その陸太を見て、七瀬は「まーた変な無理してんの…。そんなんだからアンタは…」と、誰にも聞こえないような小声で呟いた。






「陸太…く、ん…」
まただ。また…。何時も突然現れる。頭の中に、陸太が居る。居るのに…その顔に笑みなど無い。冷たい表情…。何も言わず、沙奈を見つめる。心の中にいるだけで幸せだと思っていたはずなのに、いつの間にそれがこんなにも苦しくなってしまったのか…。頭の中に居た事を喜んでいた罪なのだろうか?目を固く閉じても、陸太は頭から離れない。どこにも行かない。ただ、沙奈の胸を締め付けるような切ない表情を浮かべている。どうすれば良いかも分からない。自分には何も出来ない。沙奈はまた、固く目を閉じた。
(このままじゃ…駄目…。)
沙奈は布団に潜り込み、布団を抱き締める。すぐそこで陸太が寝ている様にすら感じる。いつからこんな事を考えるようになったのか…こんな事、した事は無い。それでも…もう気持ちが抑えられない。沙奈は自身の手を軽く見つめ、下腹部へ滑らし、そして_______。

「…………っ……!」

沙奈以外。誰も居ない部屋の中。響くのは、沙奈が身を捩り、布団と擦れる音、そして口から発せられる、寂しく…、そして甘い声だけだった。


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