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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第22話 獣の様な男
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に振り「えぇ」と笑って見せた。

「選手は五人ずつ。ルールは二点先取にしましょうか。早く決まってしまうのも面白く無いですし」

 まるでゲームを始める前の子供の様に無邪気に笑うと、スキアは再度空中に浮遊し、フェイ達を見下げる様にして話続ける。

「準備が出来たら声をかけてください。私は下の方でお待ちしておりますので。ただ、覚えていただくように……時の流れは本来の世界と共にあります。それに、この世界に人間が長居するのもあまりオススメ出来ません」

 チラリと細めた単眼でフェイの事を一瞥すると、最後に「では」とだけ呟いて、スキアは塔の下の方へと飛んでいってしまった。
 去っていく黒い後ろ姿を見ながら、アステリは先程彼に言われた言葉を思い出していた。

――「クロト様はアナタにとって生みの親にあたる存在です」――
――「…………親の望み、それに応えるのが子供である我々の役目でしょうに」――

 ギュッと両の拳に力を籠め、握り絞める。

――親……アイツがボクの……

 噛み締めた口の中から、ギリッと歯の軋む音がした。

「…………? アステリ……?」

 不意に背後から名前を呼ばれ、ハッとする。
 少し慌ててその方向に視線をやると、自分の事を心配そうに見つめるフェイとワンダバがいた。

「ぁ…………何、フェイ……」
「大丈夫……? 何か、考えていたみたいだけど……」

 そう、心配そうに尋ねるフェイ。
 そんな彼の隣にいるワンダバも「大丈夫か?」と気使いの言葉をかけてくれた。

「あぁ…………大丈夫だよ……」
「そう……」
「うん…………ごめん、心配かけてばかりで……」
「いいんだよ」

 「気にしないで」と言い笑うと、フェイはアステリの後ろ……スキアの去って行った方向を見詰め、真剣そうな表情で言葉を発する。

「……行こう、アステリ。行って、勝たなくちゃ……元の世界に戻る為にも」
「うん……!」

 フェイの言葉にそう頷くと、三人はスキアの待つ広場へと歩き始めた。


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