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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第21話 見せたいモノ
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景色へと視線を移した。

 仲間が集まり、準備が揃えばアステリの故郷である【モノクロ世界】に行かねばならない。
 その前に、フェイはどうしてもアステリにこの景色を見せたかった。
 この世界には素晴らしい物が沢山ある事を、アステリに知っていてもらいたかったのだ。

「そうだぞ。アステリ君!」
「! クマさん……?」
「クマではなぁーいっ!!」

 アステリの言葉に興奮気味に叫ぶと、ワンダバは「フンッ」と胸の前で腕を組んで続けた。

「君の事情を深くは知らないが、この世界には良い物が沢山ある! 決して、そのクロトと言う奴の様な悪いモノだらけでは無いと言う事を覚えて置いてほしいのだ!」
「! …………もちろん、分かってるよ。ボクもこの世界が大好きで……ずっと、憧れてたんだから……」

 そう嬉しそうに笑うと、アステリはズボンのポケットから何やら二つに折りたたまれた一枚の紙を取り出した。

「それは?」

 フェイが不思議そうに尋ねる。
 アステリは二つに折りたたまれた紙を開くとフェイに手渡し、その紙に描かれている物を見せてみせた。

「写真……?」
「だいぶ古いモノみたいだな……」
「でも、綺麗な写真だよ」

 色あせ、端の方等ボロボロになりかけた古い写真はそれでもハッキリと青く、透き通る様な綺麗な空を映し出していた。
 アステリは目を細めながら、懐かしそうにその写真について語り出す。

「その写真……だいぶ前に、アッチの世界で見つけたんだ」
「モノクロ世界で?」

 フェイの言葉にコクリと一つ頷く。
 アステリ曰く、色の無い世界で読んだ古い本。
 この写真は、その本に挟まっていたと言う。
 白と黒の濃淡しか見た事がなかった彼にとって、この写真の青空は強く印象に残った事だろう。

「この写真があったから……ボクはキミ等の住むこの世界がとても素晴らしいモノなんだと言う事を知る事が出来た。今、ボクがここにいるのも……全部、この写真のお蔭なんだよ」
「そっか……アステリにとって、この写真はとても大切なモノなんだね」

 「はい」とフェイは持っていた写真をアステリに渡す。
 アステリは受け取った写真を大事そうに見詰めると、「うん」と呟き、少し照れくさそうな笑顔を浮かべた。

「大切な……ボクの宝物だからね」

 アステリの屈託の無い笑顔に、目の前のフェイとワンダバの表情も自然と綻んでいく。

「そっか。じゃあ、大切にしないとね」
「うんっ」
「良いですね〜、青春真っ只中って感じで」
「!!」

 そう、愉快そうに笑う中性的な声。
 突然聞こえた聞きなれぬ声に驚くと、三人は一斉にその方向へと目を向ける。

「やぁ。やっと見つけましたよ…………アステリさん」

 
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