託す答え
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いるのは身体に埋め込まれた呪符によるもの。自我を保ちながらもそうするようにされ、もどかしい思いを抱いている事だろう
「くっ!避けろ??死ぬぞ!」
ハルマのクナイが宙を舞う。弾き飛ばされたクナイは柱に刺さり、夜桜はハルマの腹部を貫こうと迫っている
「雷遁・縛り蜘蛛」
「ハル??」
血による水飛沫が相手の顔を、身体を汚す。彼の腕を掴んでいる両手からは青白い雷が身体を縛り付け、動きを止めていた。ハルマはわざと躱さなかったのだと彼は理解する
「態と躱さずに動きを・・・・・・死にてえのか?」
「あんたになら殺されても文句はねえな」
「誇り高き死を望むか」
達観した様子でハルマは言う
「そんな大層なもんじゃない。ただ、俺は死ぬなら英雄か、強い奴に殺されたいってだけだ」
殺されるならせめて生きた証として栄誉あるものを遺したい。それがハルマの気持ち。そして、男にはその気持ちがよく分かるようだった
「・・・・・・お前はかつての俺に似ているな。国を追われた俺と同じ眼をしている」
「どういう事だ?」
「お前の雷遁のおかげで動けないからな。話してやるか」
彼は語り出す。簡潔に、しかし重い自身の生を
「俺は侍の国・・・・鉄の国で生まれた。父は侍。母はどっかの里の元忍だった。12歳までは幸せだったさ。だが、それまでだ。俺は命を狙われた」
「両親にか?」
乾いた笑いが彼の口から溢れる。未だ、あの時の痛みが癒える事はない
「襲ってきたのは父親だがな。母は里から下された命に従い俺を、父を殺そうとした。家族よりも里を取ったのさ」
「父を幻術で操り、俺を襲わせた。必死に抗い、気付いた時には俺は両親を殺していた。その日、俺は人間の醜い部分の一端に触れた。そして血の匂いと人を殺すという行為を知った」
簡単に言っているが、それはハルマも経験した事はない。自身が想像する以上の苦しみだということは分かる
「死のうとは思わなかったのか?」
「さあな。だが、生きていればその内希望が見つかると思って生きてきた。結局見つからなかったがな。希望も、意味も」
時は巡る。やがて彼は火の国に仕え、アサヒと出会う。その僅かな日々は彼を癒してくれた。それでも希望が生まれる事は無かった
「そして、最後は殺されても良いと思える相手に俺は殺された・・・・・・と思っていたんだがな。まさか生き返るとは。いや、あくまで俺はこの術によって現世に縛り付けられているだけだ。生き返った訳じゃねえな」
「あんたみたいな奴がこんな下劣な術にいいようにされるなんてな」
「だが、そのおかげで夜桜を託すべき人間が見つかった」
名前も知らぬ人間に操られるという屈辱を体験した筈なのに満足そうな
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