13. 久しぶりの外出(2)
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いるあんこの今川焼きを一口で急いで食べ終わり、キッと店の出入り口を睨んだ。
「……ゆきお?」
「涼風。僕、ちょっとあの店に行ってくる」
「おう。んじゃあたいも……」
これだけ賑わってる雑貨屋さんなら、中もきっと楽しいだろう。サンタクロースもいるし、きっと中はクリスマス一色だ……と私がワクワクしていたら、そんな私を、ゆきおは静かに制止した。
「ごめん。ちょっとここで待っててくれる?」
「へ? 一緒に入っちゃダメなの?」
「ダメ」
『なんで!?』と怒りに任せ、不満をぶちまけそうになった。こんな楽しそうなお店なのに私は入っちゃダメだなんて、嫌がらせもいいとこだ……と口走りそうになったのだが……
「う……」
「……お願いだ」
「うん……」
……いつになく真剣な……今まで見てきた中で、一番真剣な表情で、ゆきおは私に頭を下げた。いつも穏やかで優しいゆきおにあるまじき真剣さ。その表情に柔らかさはなく、まるで、私のことを助けてくれた、あの戦闘のときのような凛々しさがあった。
私は、そんなゆきおの真剣さに呑まれ、つい首を縦に振ってしまった。
「……よかった。すぐ戻るから、ちょっと待っててね」
私の返事を聞くやいなや、ゆきおはパンツの紙袋を持ったまま、私に背を向け、出入り口に向かって歩いて行った。ちょうど出入り口からは、たくさんのお客さんが出てきたところだ。
「……」
小さなゆきおの背中は、そのたくさんの人たちをかき分けかき分け、お店の入り口に到達し、店内に消えていく。その小さくて細っこい背中だけを見れば、ゆきおはとても頼りない。
だけど私は知っている。あの細っこく小さな、頼りない背中のゆきおは、誰よりも優しく、そして頼もしい。戦えない葛藤と恐怖と不安から私を救ってくれ、そして榛名姉ちゃんと仲直りさせてくれた。
今店内で周囲のお客さんにもみくちゃにされながら、それでも奥の方に消えていくゆきおの背中を、見えなくなるまで見守る。ゆきおは一体、お店で何を買うつもりなんだろう。……ゆきおのことだから、本か何かでも買うつもりだろうか。それともパズルか何かかな……パズルだったら、二人で作りたいな……
最初こそ戸惑ってしまった、ゆきおとのデートだったけど、今振り返ると、とても楽しかった。ゆきおに『パンツを見せろ』とセクハラを働いてしまったのも楽しかったし、お店で周囲の人にクスクス笑われたのも、楽しいみやげ話になるだろう。今川焼きも美味しかったし、素敵なお姉さんにも会えた。ゆきおと入れ違いにお店から出てきた数人のお客さんとすれ違った時、私はそんなことを考え、帰りもゆきおと手を繋いで帰ろう……そう思っていた。
……だが、このデートが楽しかったのは、そこまでだった。
――
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