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真田十勇士
巻ノ百 後藤又兵衛その四

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「そして我が屋敷の道場でじゃ」
「そこで、ですな」
「稽古をつけさせてもらう」
「それでは」
 こうしてだ、清海は幸村と共に後藤の屋敷に入った。そこは大きいが至って質素な内装であった。
 その内装を見てだ、幸村は後藤に言った。
「実にです」
「わしらしいか」
「はい、そう思いました」
「ははは、わしは贅沢は出来ぬ」
 後藤は幸村に豪快に笑って応えた。
「だからな」
「お屋敷の中もですか」
「この通りじゃ」
 何もないままに質素だというのだ。
「何もない」
「蓄えはおありですな」
「多少ある、それで供の者達もいてくれている」
 二十人程そうした者達がいるのだ。
「母上とな」
「お母上と供の者達を養うだけの蓄えは」
「持って来た、しかしな」
「それでも贅沢はされず」
「この通りじゃ」
 内装なぞ何もないというのだ。
「わしは武士でな」
「贅沢はせぬもの」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「こうしたものじゃ」
「左様ですか」
「それは真田殿も同じと思うが」
「贅沢はせぬと」
「そうしたものに興味はあるか」
「いえ」
 一言でだ、幸村は後藤に答えた。
「それがしも言われてみれば」
「左様じゃな」
「そうしたことに興味はありませぬ」
 実際にというのだ。
「どうにも」
「そうであるな、だからな」
「それがし達はですか」
「同じじゃ、生粋の武士だからな」
「贅沢はですか」
「せぬしじゃ」
 それにというのだ。
「出来ぬ」
「そしてそれはですか」
「真田殿も同じこと」
 幸村もというのだ。
「そうであろう」
「言われてみますと」
「そうじゃな」
「酒は好きですが」
「ははは、それはわしも同じこと」
「贅沢はといいますと」
 あらゆることへのそれはというのだ。
「興味がありませぬ」
「左様じゃな」
「それよりもです」
「武芸や学問じゃな」
「そして武士としての素養を養うこと」
 そうしたものにというのだ。
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