巻ノ百 後藤又兵衛その三
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「今はじゃ」
「こうなっていますか」
「拙者もそうであろう」
幸村は笑って清海に言った。
「大名であったぞ」
「あっ、そうでしたな」
「それが今ではじゃ」
「こうした浪人じゃ」
「左様でしたな」
「だからそれもじゃ」
「人の世ですか」
清海はここで幸村が言いたいことがわかった。
「栄枯盛衰ですな」
「そうじゃ、栄える者もな」
「枯れる」
「そうなることもある、だから侘しいとは考えることじゃ」
「そうなりますか」
「うむ、それに儚さ等を感じるのも人じゃが」
それでもというのだ。
「悲しいとも思うこともあるまい」
「それも人の世とですか」
「思うことじゃ」
「そうですか」
「そういうことじゃ、ではな」
「はい、それでは」
「入るぞ」
道場の中にというのだ、そしてだった。
実際にだ、幸村達は道場の中に入ろうとするがそれでもだった。ここで彼等の前に髭面の大男が出て来た。
そのうえでだ、笑って言って来た。
「よく来られた」
「まさか」
「わしが後藤又兵衛基次じゃ」
後藤は清海に自ら名乗ってきた。
「来られると思っておった」
「そうでしたか」
「うむ、気も感じておった」
「それでは」
「では真田殿」
後藤は今度は幸村にも声をかけた。
「これよりじゃな」
「はい、稽古をつけて頂けます」
「こちらの者に」
「そうして頂けますか」
「こちらこそ願ってもないこと」
後藤は笑って幸村に答えた。
「そのことは」
「そう言って頂けますか」
「三好清海殿と見た」
後藤は清海を見て幸村に問うた。
「そうであるな」
「はい、そうです」
「それがしが三好清海です」
清海も名乗った。
「左様です」
「そうであるな、ではだ」
「これよりですな」
「稽古をつけさせてもらう」
「宜しくお願いします」
「そうさせてもらう、錫杖じゃな」
後藤は清海が手に持っているそれも見た。
「槍ではないが」
「突き、叩くのは同じですな」
「うむ、だから来られたな」
「はい、そうです」
「その通りじゃ、では中に入られよ」
屋敷のそこにというのだ。
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