12. 久しぶりの外出(1)
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「呼び出しって何だろうな?」
私と摩耶姉ちゃんは、一緒にてくてくと執務室までの道順をたどっていった。廊下の窓から差し込むお日様の光は、まさに冬の温かいお日様とでもいうべき晴天の暖かさ。今歩いてなかったら、私はこの心地よさで、珍しく眠気に襲われていたかもしれない。
「さぁなー。さっぱりわかんねー」
私の隣で同じくてくてくと歩く摩耶姉ちゃんも、私たちが提督に呼び出しを受けた理由は皆目見当もつかないらしい。二人で頭の上にでっかいはてなマークを浮かべたまま、私と摩耶姉ちゃんは執務室へとてくてく歩く。
お昼ごはんを食べてすぐのことだった。私は今日は摩耶姉ちゃんと間宮に行く約束をしていたのだが……昼食後に一度自分の部屋に戻ったとき、館内放送が鎮守府全域に鳴り響いた。
――涼風と摩耶は大至急、執務室にきてくれ
とりたてて慌てた様子はなかったから、火急の用事というわけでもなさそうだが……それにしても突然の呼び出し、一体何なんだろう。途中で合流した摩耶姉ちゃんとともに、私は執務室へと急ぐことにする。
執務室の扉の前に到着する。
「あ、涼風」
「おっ。ゆきおー」
扉の前には、いつもと同じく白い室内着と、クリーム色のカーディガンを羽織ったゆきおが、ドアノブに手をかけているところだった。どうやら、私たちと共にゆきおも呼び出しをくらったらしい。
「でも館内放送じゃゆきおの名前、言ってなかったけど?」
「内線。最近ぼくの部屋に引いたんだよ」
あの生活感のないゆきおの部屋にも、少しずつものが増えてきたということか。内線なんて昨日までなかったはずだけど。
「おうおう雪緒ー。最近、あたしの妹分と、随分と仲がいいるぁすぃいじゃねーかぁ」
まさにゆきおがドアを開けようとしたその瞬間、摩耶姉ちゃんがゆきおの肩を後ろからガシッと抱いて、こんな感じでふた昔ほど前のヤンキーよろしく、巻舌でゆきおにからみはじめた。その途端、ドアノブにかけられていたゆきおの右手が、ドアノブから離れた。
「うぇひっ……へへ……」
そんな摩耶姉ちゃんのからみなんか放っておけばいいのに、ゆきおはゆきおで、ほっぺた赤くして、苦笑いを浮かべて鼻の頭をポリポリとかき、ねっとりと絡みつく視線を向ける摩耶姉ちゃんから、顔をそむけている。適当にさばいておけばいいのに……
「なー涼風ー」
「ん? 摩耶姉ちゃんなんだよー?」
「顔、にやけてんぞ?」
言われて慌てて口を抑えた。私の無意識は、『ゆきおと仲がいい』という指摘がよほどうれしかったらしい。それこそ、私自身が気づかないうちに、口角を持ち上げてしまうぐらい。……ニヤ。
「い、いいから早く執務室入ろうぜ!!」
照れ隠しに、ゆきおの代わりにドアノブに手を
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