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俺の涼風 ぼくと涼風
12. 久しぶりの外出(1)
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要なのか、私にはさっぱり分からない。正直なところ、『私たち女も男も艦娘は変わらないんじゃないの?』と身も蓋もないことを思わないわけではないのだが……。

「まぁ、ゆきおが必要って言ってんだから必要なんだよな」
「そうさ。僕達男の艦娘は、新しい存在だからね!」

 そう言って目をキラキラと輝かせて、鼻の穴を広げてそこから水蒸気を吹き出してるゆきおを見てると、そんなことはどうでも良くなってきた。ゆきおが元気。それでいいじゃないか。大切な友達のゆきおがそう言うんだ。きっとそうなんだろう。



 ゆきおとともに正門をくぐり、私たちは市街地へと向かう。正門前にはバス停があり、そこからバスに乗れば、市街地まではそう遠くない道のりだ。乗客の乗ってないバスの最後尾の席に二人で座り、私たちは市街地までの道を辿る。

「……」
「……ゆきお?」
「……」

 バスに揺られてる最中、ゆきおは、ほっぺたを少し赤く染め、まっすぐに窓の外を見ていた。

「……」

 私は、ゆきおのその眼差しに覚えがあった。

――すごい! こんなの初めて見た!!

 あの、みんなに内緒で、二人ではじめて沖に出たあの日のゆきおと、よく似た眼差しだ。あの時はゆきおは大騒ぎしていた。それに比べると、今日のゆきおはずっと静かだ。だけど。

「……」

 今、顔を窓の外に向け、後ろに向かってびゅんびゅんと流れる景色を、食い入るようにじっと眺めている、ほっぺたが赤いゆきおの目は、あの日の眼差しと、まったく同じだった。

 そんなゆきおの横顔を見ていると、なぜか胸が締め付けられた。自分でも理由はよく分からない。だけど、そのキレイな瞳に、窓の外の景色を映しているはずのゆきおの横顔は、抱きしめて支えて、守らなければならないような、そんな気持ちを抱いた。

「ん?」
「……」

 ゆきおが不思議そうにうつむき、自分の左手を見た。私は、知らず知らずの内に、ゆきおの左手を握っていた。

「どうしたの?」
「……へへ」

 ゆきおの当然の質問に、私はただ、微笑むことしか出来なかった。

 顔を上げ、しばらく私を不思議そうに見つめたゆきおは、優しく微笑んだ後、自分の左手を握る私の右手を、同じくギュッと握り返してくれた。

「……へへ」
「暖かいね。へへ……」

 ひとしきり見つめ合った後、ゆきおは再び窓の外の景色を眺めはじめた。もう少し、そのキレイな瞳を見つめていたかったけど……あんなに食い入るように景色を眺めるゆきおを、邪魔なんてしたくない。私は市街地に到着するまで、そのままゆきおの横顔を見つめ続けた。


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