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獣篇T
1 大切なものは、必要な時に限って、出てこない
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組の偵察に行く」と言って、江戸の町に降り立った。

  高杉(あいつ)は、簡単には許可を出さなかった。

  相変わらず、私が逃亡すると疑っていたようだ。
  逃亡して、裏切るつもりだと。



  いっそのこと、そんな私を手放してくれればいいのに、
  なぜ彼は、私に執着するのか…。

  

  そういえば、あいつは…

  _「お前の『獣』を抑えることができるのは、オレだけだ。」


  と言っていた。
  あれは、そういう意味だったのか…。


  困ったもんだ。


  そう思いながら、通りを歩いていくと、大きな橋に差し掛かった。

  橋の近くの電柱には、指名手配犯の写真が貼ってある。


  _桂 小太郎…


 そう、私は紅桜のとき、(ヅラ)を助けた。 
彼にはとっさに嘘をついて誤魔化したが、
(ヅラ)は、とっくに気づいているだろう。


  

  その近くには、「白夜叉」と小さく書かれた指名手配書も見えた。

  白夜叉…!
そう、私と彼は白夜叉だ。


  そういえば、また子も言っていた…。

  _「『白夜叉』ねぇ…。同じ名前のやつが2人いるとは…。アンタ、
    あいつと 兄弟なんッスか?」


そう、私は彼と同じ名前で呼ばれていた時期がある。


彼は今どこにいるのだろうか。
彼に会えるだろうか。




  ぼんやりしながら橋の上を歩いていると、頭に傘をかぶった、僧侶のような恰好をした
  男が、橋の方に背を預けて、こちらを見上げた。


  そしてその男はこう言った。


  _戻ってきていたのか、死神…いや、白夜叉、と言った方がいいのか…?


  _ちと、真選組を偵察しにな…。

  _…そうか。ならばせいぜい、気を付けることだ。
   ちなみに、今までどこへ行っていたんだ?

  _遠いところだ。だがな、3か月ほど前、高杉(あいつ)が私を、鬼兵隊へ強引に連れて行った。
   まぁ、誘拐した と言っても、過言ではないかもしれん。


  心臓が、キリキリと痛み始めた。

  _危ない、このままでは…。
   全てバレる危険がある。



  _そうか。まぁ、元気そうでなによりだ。
   あいつにも、よろしく伝えておいてくれ。


  _相分かった。
   次戻ったら、伝えておく。



  だがその時、後ろから、パトカーが来た。

  _真選組…!



  車から声が聞こえてきた。

  _「かぁ〜つらぁ〜。そこに直れ!
    神妙にしろ、お縄につけ。」


これは、一番隊隊長
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