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誘拐篇
5 人生には、知りたくないことだらけ
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 _痛っ!

  心臓を何かで突かれたような痛みが走る。

  何だ!? 今、何が…!?


  体が痺れて、思うように動かない…
  体から力が抜けて、床に崩れ落ちた。

  …まるで自分の体が、自分のものではないような感覚に襲われる。

  
  _「おい、しっかりしろ。」

  私のもとに駆け寄ってくる。
  そして彼は、私の肩を抱いて、揺さぶった。

  _「顔色が悪いぜ…」



  意識が朦朧としてきた。

  _「お前は、人を殺して初めて、生きられる。」


  
  何かが私の耳元で囁く。

  _やめてくれ…もう、うんざりだ…


  薄れていく意識の中で、高杉の腕から、体温が伝わってくる。
  高杉の心配そうな顔が、こちらをのぞき込んでいるのが見えた。

 
  _あいつでも、あんな顔、するんだな…
   攘夷志士の中でも最も危険な男だと謳われる…高杉(あいつ)でさえ


  _「高…杉……私は大…丈夫だ…から、また子…先輩に伝えて…くれ… 
    これから…いろいろ宜しくな…って…」

  _「…わかった。何があったのかは知らんが、とりあえずお前を救急室に連れていく。」


  _もう返事をするほどの気力もない…

  私には、頷くことしか、できなかった。





  それから、どのくらいの時間がたったのだろう…

  ピ、ピ、ピ、ピ…


  不気味な音がする…

  だがそれは、「私」がちゃんと生きている証拠だった。


  目を覚ます。
  あたりを見回そうと首をひねると、離れたところに、また子が座っていた。

  また子は、私の目が覚めたことに気づいたのか、私のところに駆け寄ってきた。


  _「目が覚めたッスか…。よかった。
    私が誰か、分かるッスか?」

  だいぶ、私の体力も、回復したらしい。




  _「…へそ出し…女?」

  _「ったく…まだ言ってんスか?
    また子って、言ってんじゃないスか」

  _「あぁ、そうだった…また子…でしたね。」

  _「おいィィィ!『先輩』も、付けろっつってんだろーが!」

  _「あ、すいやせん、先輩ィ。
    先輩、仕事の方、大丈夫なんですか?
    しかも、私のように、ちゃんとした味方かどうかも分からない奴にかまってて。」

  _「…まぁ、確かにそうだが、一応これでも、お前の上司だからな。
    部下の心配くらいするッスよ。」



  あ、そうだ。衣装のお礼も言っておかないと。

  _「あと…先輩ィ…
    素敵な衣装を、ありがとうございました。
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