639部分:第四十九話 馬岱、真名を言うのことその十
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第四十九話 馬岱、真名を言うのことその十
「私を放して下さい」
何時の間にかその命綱は切れてしまっていた。二人共だ。
「そうすれば魏延さんは」
「嫌です」
だが、だった。魏延はその申し出はすぐに断った。
「それだけは」
「けれどそうすれば」
「大丈夫です、私は必ず」
こう言う彼女だった。
「劉備様をお護りします」
「私を」
「そうです。私は劉備様の為に」
その劉備を見ながらの言葉だった。
「この手は放しません」
「けれど」
「お助けします」
魏延の言葉は変わらない。
「この命にかえても」
「魏延さん・・・・・・」
「何やってんのよ」
そしてだった。馬岱が言う。
「このままじゃ」
「どうするのじゃ、それで」
「決まってるじゃないですか」
厳顔の言葉にもすぐに言い返す。
「ここはですね」
「ふむ、ここは」
「私が行きます!」
こう言ってだった。真っ先に飛び出る彼女だった。
そのうえでだ。魏延のその身体を掴んで思いきり引き揚げたのであった。
「うんしょっと!」
「!?」
「蒲公英ちゃん!?」
「これでどうよ!」
馬岱の力が加わるとだった。魏延は劉備を引き揚げることができた。劉備はすぐに橋の上に戻ってだ。そうして魏延に付き添われながら橋を渡り終えた。
それを見てだった。既に橋の向かい側に戻っていた馬岱が言うのだった。
「よかったわね」
「御前、まさか」
「そうよ、劉備さんを助けたのよ」
こう魏延に返す馬岱だった。
「あんたじゃないわよ」
「ふん、それはわかっている」
ここではいつものやり取りだった。
「だが、だ」
「何よ」
「礼を言う」
それは言う魏延だった。
「お陰で劉備様が助かった」
「御礼なんていいのよ」
それはいいと返す馬岱だった。
「桃香さんが助かったんだからね」
「そうだな」
「あの」
その劉備がだ。魏延のところに来て言うのだった。
「魏延さん、よかったら」
「はい、何でしょうか」
「今度のことは本当に有り難うございます」
まずは礼を述べてからなのだった。
「それでなのですけれど」
「それで?」
「私を真名で呼んでくれませんか?」
「真名で、ですか」
「それで私も」
彼女自身もだというのであった。
「魏延さんのことを真名で」
「何と、私の真名を」
それを聞いてだ。魏延は目を瞠ってだ。こう劉備に問い返した。
「呼んで下さるのですか」
「いけませんか、それは」
「滅相もありません」
魏延が断る筈がなかった。
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