暁 〜小説投稿サイト〜
俺の涼風 ぼくと涼風
11. お化粧ならあのひと(2)
[9/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
…ところで、まだ解決してない問題がある。

「なー。ゆきお」
「ん?」
「ゆきおはさ。なんであんなに榛名姉ちゃんをおすすめしてくれたんだ?」
「んー……」

 そうだ。最終的にそれが功を奏したわけだが、いつも静かなゆきおにしては、榛名姉ちゃんに関してはとても強情で強引だった。そのことだけが、妙に気になっていた。

 私の問いに対し、ゆきおのほっぺたの赤みがすっと引いた。言おうか言うまいか迷っているように口をもごもごと動かした後、とてもやわらかな眼差しで、私の目を見て、ゆきおはポツリと、こう言った。

「……榛名さんね。ここに時々顔を見せてたんだよ」

 ゆきおが言うには、私がゆきおと仲良くなった頃から、実は榛名姉ちゃんは、よくゆきおの部屋に顔を出していたそうだ。

「そうだったのか……」
「それでね。よく涼風の話をしてた」

 なんでも、

――この前は、涼風ちゃんを助けてくれてありがとうございました

――最近涼風ちゃんが明るいのも、雪緒くんのおかげです

 とこんな具合に、最近明るくなった私のことを、とても嬉しそうに話していたんだとか。

「でさ。よく涼風の話をするから、『仲いいんですね』って言ったら……」

――そんなことないです。
  榛名は、涼風ちゃんにずっと、ひどいことを言ってますから……

「って言ってたから、何かあるんだろうって思って」
「そっか……」

 それでお昼にお化粧の話が出たから、榛名姉ちゃんの話を私に振ってみたところ、私の様子もなんだかおかしい……だから二人が話ができるよう、榛名姉ちゃんを大プッシュした。事の真相は、こうだったそうだ。

「そっか……それで榛名姉ちゃんを……」
「うん。どうなることかと思ったけど、涼風を見て、仲直りできたんだなって思ったよ」

 私はうつむき、目に涙が溜まるのをゆきおにさとられぬよう、必死に隠した。ゆきおは、恐怖で戦えなくなっていた私だけでなく、榛名姉ちゃんも助けてくれた。仲直り出来なくて苦しんでいた私たちを仲直りさせてくれて、またあの時のような仲良しに戻してくれた。

「ありがとな。ゆきお」
「んーん。僕は何も。お礼ならさ。お化粧を教えてくれた榛名さんにいいなよ」
「榛名姉ちゃんにはもう言った。だから、ゆきおにも言わなきゃ。ありがと」

 ゆきお。本当にありがとう。ゆきおは、いつも私の力になってくれる。怖くて震えていたら、カーディガンを貸して身体を温めてくれる。困っていたら、手を差し伸べて力になってくれる。私の中で、ゆきおの存在が少しずつ大きく、そして欠けてはいけない存在になりつつあることが分かった。ゆきおは、私にとって、無くてはならない友達だ。

 ゆきおと友達になってよかった。この小さくて細っこい……
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ