11. お化粧ならあのひと(2)
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がいっぱい溜まってる。その涙を拭かず、榛名姉ちゃんは、私のそばに置いていた手鏡に手を伸ばし、そしてその鏡を私に向けた。
「……ほら。クマは消えました」
鏡には、クマがすっかり消えてなくなった私が写っている。クマが消えているだけじゃなく、榛名姉ちゃんのお化粧で、いつもより少しだけキレイになった、私が写っている。
「こうすればクマも消えますし、いつもよりもう少しだけ、キレイになれます」
私の目に、再び涙が溜まってきた。今は泣きたくない。泣いちゃダメだ。泣いたら、せっかく榛名姉ちゃんがしてくれたお化粧が無駄になる。泣くな。涙を流すな。
「今度から、メイクは榛名が教えますから」
「う……ひぐっ……」
「……だから、もしよかったら、また昔みたいに……仲良く、してくれますか?」
「ひぐっ……ひぐっ……」
お化粧を崩したくなくて……榛名姉ちゃんが私のためにしてくれたお化粧を台無しにしたくなくて、私は必死に涙を我慢した。けれど。
「……涼風ちゃん」
榛名姉ちゃんが、笑顔で、私を昔の呼び名で呼んでくれた。この瞬間、私の心に、榛名姉ちゃんと仲直りできた喜びと、今まで榛名姉ちゃんを誤解していた申し訳無さが、胸にあふれた。お化粧が崩れるのも厭わず、私は涙を流して、わんわん泣きながら、しゃがんで私と目線を合わせてくれている榛名姉ちゃんの胸に飛び込み、しがみついた。
「ごめんなさい! ひぐっ……榛名姉ちゃんごめんなさい!!」
話したいことはいっぱいあった。でも、私の口からはこの言葉しか出てこなかった。頭の中で何度も、もっと言いたいことを探したけれど、私の口は、その言葉しか発することが出来なくなった。
「そんな……榛名こそ、ずっと意地悪しててごめんなさい……」
「違うよ! 悪かったのはあたいだ!! ずっと姉ちゃんが苦しんでるのに気付かなくて!! ずっと、ずっと姉ちゃんはあたいを憎んでるって勘違いしてて!!!」
「違います……悪いのは榛名です。ごめんなさい涼風ちゃん……ほんとに……ほんとに、ごめんなさい」
「ごめんなさい榛名姉ちゃん……!! ほんとに、ごめんなさい……ッ!!」
私はボロボロと泣きながら、榛名姉ちゃんの胸に頬を寄せた。
「ひぐっ……榛名姉ちゃん……榛名姉ちゃん……!!」
「ほら……そんなことしちゃ……」
「ごめんなさい……ごめんなさい……榛名姉ちゃん……ッ!!」
「せっかくメイクしたのに……台無しに……なり……ますから……」
そして榛名姉ちゃんも、私のお化粧の心配をしながらも、私のことを強く抱きしめてくれた。その力はとても心地よく、そして榛名姉ちゃんのぬくもりは、ゆきおのように、とても温かかった。
その日の夕食時、私は久々に榛名姉ちゃんと晩ご飯を食べるこ
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