11. お化粧ならあのひと(2)
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に座らせて、榛名姉ちゃんは再度居間に戻る。そのまま私が不安一杯で待っていたら、ドアの向こうから、『頑張ってクダサーイ』という、金剛さんのポソポソ声が聞こえた気がした。でもそれが何を意味しているのかは、混乱してる私には、よく分からない。
ガチャリとドアノブが回り、榛名姉ちゃんが再び姿を表した。その手にはポーチといくつかの化粧品、そして手鏡があった。いくら私が普段お化粧をしなくても、それがファンデーションやチークの類なのは、見て分かる。
「あ、あの……榛名姉ちゃん」
「……」
「教えて……くれるの?」
「……とりあえず、そのクマを隠します」
ベッドに座る私の隣にポーチと手鏡を置いて、その後私の前に片膝をついた姉ちゃんは、私の前髪を準備してたヘアピンで止めた。そのあと、私の左目の下まぶたを下に引っ張って、なんだかあっかんべーみたいな状態にして、ジッと私の顔を見つめた。
「あ、あの……なに、やってんの?」
「クマの種類を見てます」
そう言ってしばらくジッと私の顔を見ていた榛名姉ちゃんは、私のほっぺたから右手を離し、そのままポーチに手を伸ばして、中からチューブみたいなのとスティックみたいなのを取り出していた。チューブになってるものはファンデーションだって分かるけど……
「コンシーラーです。これでクマを隠します」
ファンデーションを自分の左手の甲で伸ばしながら、榛名姉ちゃんが私の疑問に答えてくれた。私は何も言ってないのに、視線だけで、私が何を考えてたのか、分かったんだなぁ……。そんな風に考えている私の顔に、榛名姉ちゃんはファンデーションを塗っていく。
「本当は、あなたにはパウダーのファンデーションの方がいいんでしょうけど……」
「……」
「でも今日は、クマがひどいですから。でも薄く薄く伸ばしますから」
最初はほっぺたに……次はおでこと鼻に……榛名姉ちゃんが、人差し指で優しくぽんぽんとファンデーションを伸ばしてくれた。一通りキレイに塗ってくれたあと、コンシーラーを取り、今度はそれを私のクマに、人差し指で優しくポンポンと伸ばしてくれる。
「……あなたのクマは茶グマです」
「茶グマ?」
「はい。自分のクマが何かは、知っておいて下さい」
「うん……」
コンシーラーをポンポンと塗り終わった後は、なんだか固まった粉みたいなのを、スポンジでやっぱり顔にポンポンと塗ってくれた。お化粧をしてくれてるからなのか、その感触はとても優しく、心地いい。
「……思い出すんですか?」
とても大きな筆みたいな刷毛で、私のほっぺたにチークを優しく塗りながら、真剣な表情の榛名姉ちゃんが、私にそう聞いてきた。その言葉には、いつものような刺々しさはない。とても優しくて、私への気遣いに満ちている。
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