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誘拐篇
4 獣のざわめき
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  _「なかなか、似合うじゃねぇか。」

  いつの間にか、高杉(あいつ)がいた。


  _「無理やり連れてきた割には、言うじゃないか。
    気に入ってくれたか?」

  _「まァな。
    ここまでしてもらって、今さら逃げようったって、逃さねぇからな。
    どこまででも探しに行ってやらァ」


  _「ふん。好きにするがいい。
    私は、ここが嫌になればすぐにでも、どこへでも行くと決めている。
    お前の見当もつかない場所にでもな。」

  _「ほぅ…やれるもんなら、やってみな。
    多分、無理だがな。」


  そう言って高杉(あいつ)は、じりじりと迫ってきた。
  そして角に追い詰められ、顎をつかまれた。

  _「今度また逃げようとでもしたら、お前の体を、もう二度と動けないようにしてやる。
    そして、一生 嫌でもオレのそばにいさせる。」

  反論する間もなく、唇を奪われた。

  抵抗できない。このままでは、彼に洗脳される。
  狂気の道へ、引きずり込まれる…

  私の中の、「獣(自分)」が、目を覚ますのも、時間の問題だろう。  
 

  高杉の強引なキスを、なんとか引きはがして、私は彼に宣戦布告した。
 
  _「私が死ぬ時まで、私は、私の意志で生きていく。
    お前に左右されずとも、自分の力で。
    そのために何をしでかそうがな。

  _ その時は、たとえお前が立ちはだかろうとも、容赦なく切り捨てる。」



  一旦 動作をやめて、私の話を聞いていた高杉(あいつ)は、
  突然、私をまた 押し倒した。

  そして、こう告げた。

  _「…そう上手くいくかねェ…?
    ま、何度でもいうが、お前の『獣』を抑えることができるのは、オレだけだ。
    そのことだけは、忘れるなよ。」

  そう言って、私の体を愛撫する。


  _「…っ…はぁっ……触るなっ! 放せっ!
    今から私は、また子…先輩のところに行かねばならない。

    あいにくだが、お前の遊びに付き合う暇はない。」


  _「杏奈。
    残念だが、今日お前は、また子のところへ行かなくて、よくなった。
    代わりにオレが伝えとく ってなァ。」


  _「…いや、是非先輩のところへ行きたい。
    この着物のお礼をしたくてな。」

  _「そのお礼は、オレが受ける。なぜならそれは、
    オレがお前のために買ったものだからだ。


  _…とんでもない借りを作ってしまった…。
   しかも、この世で1番、困るやつに…!


   嫌な予感はしていたが…。


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