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俺の涼風 ぼくと涼風
10. お化粧ならあのひと(1)
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 はじめ私は、ゆきおは私のことをからかっているんじゃないか……私と榛名姉ちゃんの関係性を、おもしろおかしく茶化してるんじゃないか……そう疑った。でなければ、何かしらの理由があって榛名姉ちゃんにお化粧を教えてもらうことは不可能だと分かった後も、こんな風にしつこく食い下がってこないだろうからだ。

 でも。

「無理だよ。ゆきおー……」
「でもさー。一回お願いしてみたら?」
「無理!」
「そこをなんとか……っ!」

 真剣な表情で、私に何度も榛名姉ちゃんをおすすめしてくるゆきおの様子は、決して面白半分で私に食い下がっているようには見えなかった。今もゆきおは私に対し、両手を合わせて頭を下げて『ちょっと頼んでみてよぅ』と口走っている。

 ゆきおの目は、とても真剣だ。それこそ、なんとしても私と榛名姉ちゃんを会わせたいかのような……

「なーゆきおー」
「へ?」
「なんでそんなに榛名姉ちゃんのことにくいついてくるんだ?」

 どうしてゆきおは、こんなに真剣に、私に榛名姉ちゃんをおすすめしてくるんだろう? 単純に疑問に感じた私は、単純にゆきおに質問をしてみたのだが……

 私の問いかけに対して、ゆきおはほっぺたを少々赤くしてうつむいて、急にもじもじしはじめた。しばらくもぞもぞと口を動かした後、ゆきおは急に顔を上げ、真っ直ぐな眼差しを私に向ける。ほっぺた赤いけど。

「……だ、だって榛名さん、キレイじゃないか!!」
「確かにキレイだけどさー」
「あんなにキレイな人なら、お化粧だってきっとうまいよ!!」

 確かに言われたとおり榛名姉ちゃんはキレイな人だし、それこそお化粧だってきっと上手なんだけど……本当にそれだけだろうか? なんだか気になってきた。ちょっと問い詰めてみることにする。

「……ゆきお」
「ん、ん? なに?」
「ゆきおさ。何かあたいに隠してる?」
「ソ、そんなことはないよ?」

 ズバリ、ゆきおに直球をぶつけたみた。ゆきおは途端に冷や汗をかきはじめ、私から見て右上の方を視線が定まらない目で見上げながら、口をとんがらせて口笛をピューピューと吹き始めた。絶対に何か隠している……。私の疑念が確信に変わる。

「うそつけー。絶対にあたいに何か隠してるな?」
「そ、そんなことないクマ」
「球磨さんのマネしてもダメだぞー」
「何も企んでない……ですって。ぱんぱかぱーん」
「苦し紛れにろーちゃんのマネしても、その細っこい身体で愛宕さんのマネしてもダメだっ」
「ゆ、ゆきおは何も、隠してないのですー」
「いい加減ほんとのこといえよっ」

 こんな感じでしばらくの間、私とゆきおの間に、この上なくしょぼい戦いが勃発した。私が問いただす度、ゆきおはろーちゃんや球磨さんのモノマネをしたり、愛宕さんみた
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