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俺の涼風 ぼくと涼風
10. お化粧ならあのひと(1)
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でいる。確か以前、『その本棚にあるのはほとんど読んだよ』と言っていた。

 確かにゆきおは男の子だけど……あれだけたくさんの本を読んでるゆきおなら、ひょっとしたら、お化粧の仕方を知ってるかも知れない。今、目の前で口の中に粉薬を流しこもうと、上を向いて嫌々口を開いている、この大切な友達なら、ひょっとしたら分かるかも……

 それに、なんだかゆきおは女の子みたいな顔してるし。ホントに、ひょっとしたら、知ってるかも……

「なーゆきおー」
「ん……んー?」

 ギュッと目を閉じながら、恐る恐る粉薬を流しこもうとしているゆきおに、私は意を決して質問した。

「お化粧の仕方教えてくれよ」
「ブホッ!?」

 その瞬間、ゆきおは盛大にむせ、口に流しこんでる最中だった苦い粉薬と、口に含んでいた水を盛大に吹き出していた。

「グホッ!? ゲフンッ!? えフッ!? えフッ!!?」
「大丈夫か?」

 ゆきおの口から吹き出された粉薬が、まるで吹雪の時の粉雪みたいにキレイに飛んでいく。でもキレイなのは粉雪だけで、ゆきおが口から吹いた水は、盛大にゆきおの掛け布団に吹き出されていた。私は急いでキャスターの側面にかけられていたタオルを取り、それで素早く掛け布団の上の水分を吹いてあげた。

「大丈夫かって……涼風のせいじゃないかっ! ちくしょっ……鼻に……ケホッ」
「えー。だってゆきおなら知ってんじゃねーかなーって思って」
「僕は男だよ? ゲフッ……化粧なんて出来るわけないって」
「でもゆきお、あれだけ本読んでっからさー。だったらその中にお化粧の本があったりするかなーと思って」

 『そんなわけないじゃないか……』と半ば呆れ気味に返答し、再びキャスターの上の薬に手を伸ばすゆきお。私は再度キャスターの上の薬の包みをゆきおに渡してあげたが、その瞬間、なんだかゆきおの周囲の空気が、ちょっと苦いことに気付いた。

「……ゆきお」
「ん……な、なに……?」
「なんか苦い」
「気付いた? これがこの薬の苦味なんだよ……」
「うう……空気がピーマンより苦いって……」
「ぼくはこれを飲むようになって、ピーマンが食べられるようになった」

 私から再び薬を受け取り、その包みを開いて、水を含んだ口の中にさらさらと流しこむゆきおは、まるでピーマンを食べてる時の摩耶姉ちゃんみたいな、ぶっさいくな顔をしていた。なんせ撒き散らした後の空気を吸っただけで苦く感じるほどだから、さぞ苦いのだろう。口を含んだ薬を飲み込もうとして中々飲み込めない、ゆきおの苦悶の表情が、その苛酷さを物語っている。

 数秒の挌闘のあと、ゆきおはやっとこさ薬を飲み込んだ。そのあと、コップに残った水を急いで飲み干していたから、きっと口の中がまだ苦いんだろう。最初こそ面白おか
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