暁 〜小説投稿サイト〜
俺の涼風 ぼくと涼風
10. お化粧ならあのひと(1)
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がって三階のゆきおの部屋に向かった。

 ゆきおの部屋のドアの前に到着。いつものように『ドカンドカン』と砲撃音のような激しいノックをして、部屋に入る。いつものごとく優しい声で私を招き入れたゆきおは、私の顔を見た途端、

「やっ……て、どうしたの? クマひどいよ?」

 と、ちょっと眉間にシワを寄せて、訝しげに私の顔を覗き込んできた。ご飯を食べてる間に少しはマシになっているのでは……と淡い期待を抱いていたが、やはり現実はそううまくは行かないらしい。私のクマは、起きた時と同じく、今もひどい状況なようだ。

「うう……やっぱひどいか……」
「昨日夜ふかしでもしたの?」
「うん……まぁ」

 適当にごまかしつつ、私はゆきおのベッドのそばのソファに勢い良く腰掛けた。このソファも相変わらずやわらかい。勢い良く座っても『ぼふっ』と音を立てて、私を優しく包み込んでくれる。

 そばのキャスターに目をやった。今日は本や筆記用具はなく、水差しとコップ、そして薄い紙に包まれた何かが二つ、置いてある。

「ゆきおー、これなにー?」
「粉薬。これから飲むの」
「風邪か?」
「うん」

 ゆきおが風邪をひいてるなんて、なんだか初耳だ。見てると風邪をひいてるようには見えないけれど……ゆきおがキャスターの上の粉薬に手を伸ばしたので、ゆきおよりも近い距離にいる私が薬を取ってあげて、それをゆきおに手渡した。

「ありがと」
「あいよっ」
「でも自分でやったのに……」
「そいつは失礼っ」

 つづいて水差しを取り、コップに水を汲んでゆきおに渡す。水差しの水は冷たくもなく、熱くもない、でもぬるま湯というほどぬるくもない、本当にただの水だった。

 私からコップ一杯の水を受け取ったゆきおは、『ありがと涼風』とお礼を言ってくれたが、ちょっとばかし不服なようで、口をとんがらせていた。その後顔を引きつらせ、粉薬の包みを開く。

「うっ……」
「んー?」

 包みを開いた途端、ゆきおが小さなうめき声を上げた。何事かと私の一緒に覗きこむ。中には、ツブが細かい白い粉薬が、少しだけ入っている。

「これ、すんごく苦いんだよねー……」
「そうなのかー……ゆきおも大変だなー」

 極めて他人事のような心配を投げかけたが、ゆきおはそれに気付かないほど、目の前の薬を凝視していた。冷や汗を垂らして生唾を飲み込んで……苦い薬がそんなにイヤか。私自身も大人というわけではないが、こういうところはまだまだ子供なんだなぁと、恐怖で顔をしかめるゆきおを眺めながら考えた。

 そんなゆきおを眺めていると、私から見てゆきおの向こう側にある、大きな本棚が目に入った。あの本棚には、今までゆきおが読んできた本や、これから読もうと想っているらしい本が、所狭しと並ん
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