10. お化粧ならあのひと(1)
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
けるわよ一航戦ッ」
「フゥ……幻滅したわ。今日からあなたのこと、『五航戦のウスターの方』て呼ぶしかないようね」
「アンタのことだって、今日から『一航戦の濃口醤油』て呼ぶから!!」
「「ふんッ!!」」
なんだか至るところで、目玉焼きが原因のケンカが巻き起こってる気がする。私たちは、お互いのお皿を見た。黄身を食べる順番に違いはあるけれど、ふたりとも塩コショウをかけている。その点では、私たちはみんなと比べて、まだ気が合っているようだ。
「涼風ちゃん、食べよっか」
「おう」
気を取り直し、食事の再開。私は改めて、カリカリベーコンを黄身に浸したあと、それを口に運ぶ。とろとろ半熟の黄身と、カリカリと心地いいベーコンの塩気が、口の中で混ざり合って、とても美味しい。
「ん〜……」
一方の五月雨も、プリプリな白身を口に運び、私と同じく『ん〜……』ととろけそうな顔をしていた。何をかけても、どう食べても、目玉焼きは美味しいってことか。
……そういえば、五月雨なら、お化粧でクマを消す方法を知ってるかも知れない。五月雨は私と違い、可憐でとても女の子らしい。ある程度食事が済んだところで私は、最後に残った黄身を口いっぱいに頬張って、今まで以上に幸せそうな顔を浮かべている五月雨に、お化粧のことを聞いてみることにした。
「なー五月雨?」
「んー?」
私の問いかけに、五月雨はとろけきった顔のまま返事をした。その時、五月雨のほっぺたの肌に気付く。きめ細かくてとてもキレイな肌だが、お化粧はしてないようだった。どうやら五月雨も、お化粧はしないようだ。
「どうしたの?」
「……んーん。なんでもなーい」
「変な涼風ちゃん……」
五月雨との朝ごはんを食べ終わった後は、お昼まで時間が空く。私はその足で、ゆきおの部屋へと足を運ぶことにした。
ゆきおの宿舎に入る時、ふと桜の木が見えた。そういえば、私がゆきおと初めて会った時、この木の木陰で入渠で火照った身体を冷やしてたんだっけ。懐かしくなって、桜の木陰に足を伸ばしてみた。季節はもう12月。この桜も、茶色い葉っぱがだいぶ落ちてしまっている。ゆきおと会った時は、まだかなり残っていたんだけど。
木陰から空を見上げた。少々さみしいことになってしまった桜の木の向こう側に見える空は、薄い青色をしていて、とても高く感じる。季節はいつの間にかもう真冬。ゆきおと出会って、けっこうな時間が経ったんだなぁと、なんだか感慨深い気持ちになった。
海から吹く潮風に冷たさを感じ、私は急いで宿舎に足を運ぶ。宿舎に入ると、中の空気はほんのり暖かい。入り口のところに受付のような窓口ができていた。中に人はいないから、素通りしても大丈夫なはずだ。私は構わず宿舎の奥の階段に向かい、そのまま駆け上
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ