10. お化粧ならあのひと(1)
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にウソをついた。あの日に五月雨を失った私は、どうしても、今目の前にいる五月雨には、心配をかけたくなかった。
五月雨は私のウソをそのまままるっと信用したようで、屈託のない、朝日のように明るい笑顔を私に向けてくれた。よかった。この五月雨には、いまみたいな笑顔をずっと続けて欲しい。
そのまま珍しく五月雨とともに食堂に向かい、二人で朝ごはんを食べる。今日の朝ごはんの献立は、ベーコンエッグとサラダとほうれん草のおひたし。そしていつものお味噌汁とご飯だ。五月雨とともに鳳翔さんから朝食を受け取り、近場の席に二人でこしかけた私たちは、目の前の美味しそうな片面焼きの目玉焼きに舌鼓をうつことにする。
「涼風ちゃん」
「んー?」
「涼風ちゃんって、最初に黄身を潰しちゃうの?」
目の前でお味噌汁のお椀を持った五月雨が、私の皿の上をジッと眺めていた。今しがた、私は目玉焼きの黄身を潰して、そこにカリカリベーコンを突っ込んだところなのだが……
不思議に思い、五月雨の皿の上を見てみる。五月雨は黄身を最後に食べる流派らしく、白身の部分だけに箸が入っている。
「五月雨こそ、最初に黄身を潰さねーの?」
「なんで?」
「なんでって……」
私にとって当然の疑問をぶつけてみたのだが、逆に五月雨にとってはそれが不思議な質問のようだった。五月雨は首を傾げて不思議そうにきょとんと私の顔を見た。
「目玉焼きの黄身って、最後にひょいって口の中に入れて、幸せに浸るためのものじゃないの?」
「へ? 目玉焼きの黄身って、最初にツンツン潰して、ベーコンとかハムとかを浸して、幸せに浸るためのものじゃねーの?」
「「?」」
私たちは不思議なやりとりをしながら互いを見つめ続ける。その時タイミングよく、窓際の席の方から、まさにタイムリーな叫び声が聞こえてきた。
「なんだよー。目玉焼きって言ったら普通さー。両面焼いた黄身にケチャップつけて食べるだろー!?」
「あらあら……天龍ちゃんはまだまだおこちゃまよね……」
互いに顔を見合わせる私と五月雨。今度は朝食を今まさに鳳翔さんから受け取っている、空母の人たちの方からも、不穏で、でもとてものどかな会話が聞こえてきた。
「鳳翔さん、お醤油をお願いします」
「ゲッ!? 一航戦、まさかあんた、目玉焼きに醤油かけて食べるの!?」
「あつあつご飯の上に乗せて、お醤油をかけて黄身を突き崩す……それが目玉焼きの正統な食べ方よ」
「何言ってんの。目玉焼きにはね。ウスターソースって昔っから相場が決まってんのよっ」
「そんなんだから七面鳥だなんて言われるのよ。あなたも正規空母なら、目玉焼きはご飯の上に乗せて、醤油をかけて食べることね」
「たとえそれが原因で世界が崩壊しようとも、私はウスターをかけ続
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