閑散とした街ルーベックシティー
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
バシッ
少年は女性に強く頬を叩かれた。
「私が帰る前に家事は全部終わらせろって言っただろうが、このノロマ!」
女性はアルコールの臭いをさせ、足元も覚束ない様子だが、鋭い目つきで少年を睨みつけている。叩かれた少年はまだ小さく、7、8歳といったところだろう。しかし癇癪を起こすでもなく、泣くこともせず、無表情で「ごめんなさい」と一言だけ話し、洗濯物を畳んでいる。女性は少年のその態度が気に入らなかったのか、少年の髪を無造作に掴み、外に引っ張り出した。
「あんたは外で寝な! 言われたことも碌にできないで、家で寝れると思うんじゃないよ!」
そう言われ、少年は寒空の中、薄着で放り出されてしまった。しかし表情は相変わらず無表情だ。
「…!」
光太郎は飛び上がるようにして起き上がった。動悸が早く、冷や汗もかいている。
…夢、か。
やけに現実感のある夢だった。カーテン越しの窓の外はまだ薄暗い。時間を確認すると未だ日の出前だった。隣のベッドで眠るイヴはまだ夢の中のようで、すやすやと眠っている。
光太郎とイヴは現在小さな町の宿泊施設を利用している。今日中にはそれなりの大きさの街であるルーベックシティーに着くだろう。
それにしても妙な時間に目が覚めてしまったものだ。二度寝する気分でもないし、少し運動でもするかな。
光太郎は身支度し、イヴが心配しないように「その辺りを走ってくるよ」と書置きを残して静かに部屋を出た。
外の空気はひんやりとして気持ちよかった。そんな空気の中、光太郎は軽く準備運動をしてランニングを開始した。ちなみに光太郎は変身せずとも人並み外れた身体能力を身につけている。軽く走っているつもりでいたが、ついつい70キロ先の隣町まで行ってしまい、慌てて戻ってきた頃にはランニングを開始して3時間が経ってしまっていた。空は既に明るくなっている。
光太郎は特に気にしていなかったが、この記録は化け物である。片道70キロ、つまり往復で140キロメートルである。それを走り切る体力もすごいが、その距離を3時間で走り切るには常に時速40キロ後半のスピードを維持しないといけない計算になる。1秒で光太郎は12、3メートルも走ることがてきるのだ。RXのスペックなら25分程度で往復できてしまうのだが…。
その距離を走り切った光太郎も、流石に疲れていた。汗をかき、少し息を切らせている。
朝食前にシャワーでも浴びるかな。
光太郎はそう考え、部屋に入った。すると部屋の奥からイヴがすごい勢いで光太郎の体目掛けて飛び込んできた。
「うわっ!?」
いきなりの行動に状況を理解できていない光太郎。それよりも自分の汗の臭いが気になってしまう。
「イヴ、少し離れてくれないかな? 早朝ランニングしてき
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ