第六話 過去の歪み
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た天龍は落ち着くように深呼吸してから凰香に言ってきた。
「……金剛からてめえの手伝いをしろって命令を受けた」
「はい?」
天龍の口から出た言葉に凰香は掃除をしながら耳を疑ってしまう。すると天龍が言った。
「昨日のことがあいつにバレたんだよ。それで、そのお詫びとしててめえの手伝いをしろって命令されたんだよ」
「はあ……」
天龍の言葉を聞いた凰香は気の抜けた返事をする。昨日のことというのは、おそらく天龍達が凰香の荷物を汚したということだろう。そしてその後重巡洋艦の加古が金剛に報告でもしたのだろう。
(にしても上の命令とはいえ、お詫びに来る玉じゃないでしょうに)
凰香がそう思っていると、天龍が不服そうな表情で言った。
「まあ、今朝の事件のことを考えると、悪いことしちまったしな………」
不服そうな表情の天龍と、その後ろでつまらなさそうにしている龍田。
まあこれは凰香よりも曙の方が大きいが、そんな小さいことを気にしても仕方がない。
凰香は掃除をしながら天龍に言った。
「手伝いにきたと言ってましたけど、邪魔をしにきたわけじゃないんですよね?」
「手伝いに来たって言ってんだろうが!!」
「事故に見せかけて私を消しに来た、って命令じゃないんですよね?」
「だから手伝えって命令されたんだよ!!」
「さて、果たしてどうですかね」
天龍が声を荒げてそう言ってくるが、いまいち信用できない。まあ凰香を消しにかかってきたら、容赦なく返り討ちにするだけである。むしろ、天龍達にそのような行動をさせないようにする方が重要だ。なぜなら天龍達が凰香を殺せば、怒り狂った防空棲姫や時雨が鎮守府にいる艦娘を皆殺しにしかねないからだ。それだけは絶対に防がなければならない。
「……それに、ここを消せるいい機会だしな」
天龍の言葉に凰香は掃除する手を止めて振り返る。その顔には先ほどまでの言葉からは想像できない、一言では表しきれない表情が浮かんでいた。
様々な表情が混ざり合っていたが、一言で表すなら『哀愁』が一番しっくりくるだろう。
「何をボサッとしてるのぉ〜?さっさと終わらせましょ〜」
凰香が天龍の表情を見ていると、いつの間にか背後に立っていた龍田が凰香に鋏を向けながらそう言ってくる。
凰香はため息を吐くと、龍田の方を向いて言った。
「………そうですね。でも掃除するからには、『ガラクタ』は増やさないでくださいね」
凰香はそう言って龍田が持つ鋏をまたしても右腕で握り潰す。さすがの龍田も二回目なのであまり驚かずにガラクタとなった鋏をゴミ袋の中に入れる。
そこから凰香は天龍と龍田を加えて執務室の掃除を再開したのだ
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