第六話 過去の歪み
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ういう方だったのですか?」
凰香は作り笑いを浮かべたまま、初代提督だったという父親のことをさりげなく聞いた。すると店主が先ほどとは打って変わって困ったような、それでいて懐かしむような表情で言った。
「そうだなぁ……あの人はあの人でいろいろと話題の尽きない人だったよ」
そう言って、店主が初代提督について話し始める。
昼に執務中にもかかわらず駆逐艦や軽巡の艦娘と街に来てスウィーツを食べていては、眼鏡をかけたセーラー服のような服装の女性にこっ酷く叱られたり、夜に重巡や戦艦、空母の艦娘と街に来ては居酒屋で酔い潰されたりと二代目提督とは違った意味で問題が多かったが、艦娘達を我が子のように可愛がったり、街の人達の声に耳を傾けてくれたりととても人柄の良い提督だったらしい。
父親でもある初代提督の話を聞いた凰香は話してくれた店主に言った。
「……皆さんに慕われていたのですね」
「ああ。こんなご時世でもこの街が都市並みに豊かなのは、あの人のおかげと言っても過言じゃない。まあ、あの人は絶対に『自分のおかげじゃない』って否定するんだろうけどな……………実はここだけの話、あの人が死んだのは『大本営の陰謀』なんじゃないかって噂されてるんだ」
「確か、初代提督は当時の秘書艦を修復不能なまでに大破させてしまったんだよね?」
突然真剣な表情で声をひそめてそう言ってきた店主に、時雨が首を傾げて言う。すると店主が頷いて言った。
「表向きはな。でもその時の状況ってのが、俺達一般人でもわかるくらい不自然だったんだよ」
「不自然、ですか?」
店主の言葉に榛名が首を傾げる。すると店主が言った。
「ああ。その時あの人は大本営に呼び出されたんだが、『秘書艦だけを連れて海路を使ってくるように』って言われたらしいんだ。あの人も不審に思ってたんだが、提督である以上命令に背くわけにはいかない。それで海路を使って大本営に向かった直後に、まるで待ち伏せしていたかのように現れた深海棲艦に襲われたんだ。それであの人を庇った秘書艦が大怪我しちまって、提督を辞めさせられたんだよ」
「………確かに、それは不自然ですね」
店主の話を聞いた凰香はそう言った。
通常大本営に呼び出された場合は深海棲艦に襲われないように安全な陸路で向かう。仮に海路を使う場合でも、しっかりと護衛をつけるのは当たり前な話である。それがたった一人の秘書艦をつけて危険な海路で来いなどと命令してきたのは、明らかに不自然である。
(これは胡散臭い話ね)
凰香がそう思っていると、店主が聞いてきた。
「……ところで、お嬢ちゃん達はどうしてこんな話を聞きたかったんだ?」
「ああ、申し遅れました。私、つい先日佐世保第十三
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