8. はじめての演習(1)
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今日の作戦報告を行った後、私は執務室を後にするべく、提督に背を向け、勢い良くドアを押し開いた。
「あっ! ちょっ……!!」
提督が思い出したように声を上げるが、時すでに遅し。私が乱暴に開いたドアは、ガタンと音を立て、蝶番がボロリと外れて、完全に壁から外れてしまった。外れたドアは自身の重みで、私が握っていたドアノブから外れ、バタンという音と共に床の上に落ちた。
「……あ」
「……っのアホ……」
呆気にとられた私は、ポカンと口に開き、間の抜けた声を上げてしまった。提督は私の後ろの自身の席で、頭を抱えてそう毒づいた。
ゆきおのおかげで出撃時の恐怖を克服できた私は、次第に遠征以外の出撃任務にも駆り出されるようになってきた。はじめのうちこそ近海に迷い込んだ深海棲艦の迎撃が主だったが、最近は侵攻作戦にも駆り出されるようになってきている。恐怖さえ克服してしまえば、私はこの鎮守府でも練度は高い。重要な任務に名を連ねるのも、特におかしいわけではなかった。
同時に、摩耶姉ちゃんも出撃する機会が増えてきた。これまでは私に付き合って遠征任務ばかりをやっていたが、摩耶姉ちゃんは元々『対空番長』の異名を持つほど、対空戦が得意だ。そんな摩耶姉ちゃんが私への付き合いをやめて出撃任務にも出るようになれば、出番が増えるのは、必然と言える。
一方で、榛名姉ちゃんは相変わらず、この鎮守府の主力メンバーとして活躍している。私と、摩耶姉ちゃんと、榛名姉ちゃん……この3人が、この新しい鎮守府で主力として奮闘していること……そして、その中の一人が私であることが、私にはうれしかった。
そしてあの日、ゆきおに会いたい一心だった私によって無残にも破壊されてしまった執務室のドアは、思いの外損傷が激しかったらしい。ほんの少しでも乱暴に取り扱うと、今のように、簡単にボロリと外れてしまう体たらく。
「ったく……直るまで丁寧に開けろって言ったろうが……」
頭の上にもじゃもじゃ線が見える提督が、自分の椅子から気だるそうに立ち上がり、コツコツと音を立てて私のそばまで歩いてきた。そのまま提督はしゃがんでドアを持ち上げて壁に立てかけ、ドアの蝶番をしげしげと見る。立ち上がった提督とドアを見比べるが、やっぱり提督って、ゆきおと違って背が高いんだなー……。
「ていとくー。直せるかー?」
極めて他人事のように、私は提督に声をかけた。それが提督のしゃくにさわったのか何なのか……提督は私をキッと睨みつけ、右手を私に差し出した。
「ん?」
「ん!」
立てかけられたドアの前の提督は、私に右手で何かを催促している。私はさっぱり意味がわからない。でもわからないなりに何かをやってみるべきだ。そう思った私は、差し出された提督の右手を取って、とりあ
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