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俺の涼風 ぼくと涼風
8. はじめての演習(1)
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。こんなにむずかしい本を何冊も読んでるだなんて。

 あとは、ベッドと本棚の間に、緑色のボンベみたいなのが置かれていた。ボンベからは細くて透明なチューブが伸びていて、それが壁の中に繋がっている。

「ゆきおー。これは?」
「酸素ボンベ」
「へー……」

 ゆきおが言うには、人間に比べて、艦娘ってのは酸素をたくさん消費してるんだとか。ゆきおはまだ身体が人間なため、呼吸での酸素の摂取が間に合わないらしい。私たちは元々艦娘として生まれた存在だからまったく気にしたことがないんだが、とにかくそういうことだそうだ。

「初耳だなぁ」
「だから涼風は、ぼくよりも鼻息荒いんだよ」
「なんだとー!?」

 ゆきおの失礼な言葉にカチンときた私は、ゆきおの頭を掴んで、そのキレイなおかっぱの茶髪をくちゃくちゃと乱して差し上げる。『あっ! こら涼風っ!!』とゆきおも抵抗はするが、不思議と笑顔で、私のくちゃくちゃを嫌がってないようだった。

 ひとしきりゆきおの頭をくちゃくちゃにしたところで、ゆきおの鼻がひくひくと動く。いつもは穏やかで優しい表情のゆきおなのだが、この時だけは別だ。いつも鼻の穴をひくひくと動かし、私が持ってきたお菓子の匂いに敏感に反応する。

「ん……涼風……今日は何持ってきてくれたの?」
「当ててみなー。ハズレだったらゆきおの分はあたいが食っちまうぜ!」

 さっき失礼なことを言われた礼とばかりに、私はゆきおに理不尽なクイズを出題する。途端に真剣な表情になり、鼻の穴をひくひくさせて空気を吸い込み、紙袋から漂う香りから、中が何かを分析するゆきお。

「んー……この匂い……すん……すん……」

 正直に言うが、この時ほど、間抜けでおかしなゆきおの顔は、見たことがなかった。

 見ているこちらにものすごい真剣さは伝わってくるが、どう見ても間抜けな絵面のゆきおは、急にカッと目を見開き、私を右手で指差した後……

「桜餅!!! しかも関西風だッ!!!」

 と一発で言い当ててしまった。桜餅は正解だけど、関西風?

「桜餅って関東と関西でちょっと違うんだよねー」
「ふーん……」

 私にとっては世界一どうでもいい知識を、ドヤ顔で披露するゆきお。その得意げな顔がなんだか鼻につく。ちょっと困らせてやろうかとも思ったが……

「だからすずかぜっ! 早く! 早く桜餅を!!!」

 こんなふうによだれを垂らしながら、鼻息荒くフンハーフンハー言ってるゆきおが不憫になってきた。私は紙袋を開き、中を覗く。言われてみると、中身のものは私がよく知ってる桜餅とは違う。なんだかピンク色のご飯みたいな塊が桜の葉っぱで包まれてるような。

「……あたいが知ってる桜餅とは違う」
「涼風はずっとここにいたんだから、関東風のクレ
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