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俺の涼風 ぼくと涼風
8. はじめての演習(1)
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えず握手してみることにした。特別サービスで、握手した手を上下にぶんぶんと振ってみた。

「……なにやってんだ」
「握手」
「なんで」
「提督、あたいと握手したいのかなーと思って」

 帽子を取った提督の髪の毛が、なんだかみるみる逆立ってきたような気がする……ひゅおっという、人の感情が動く音が聞こえた気がした。これはまずい。怒られる……そんな気がする。

 次の瞬間、提督の全身から私に向かって、強烈な轟音と向かい風が発生した。

「ドアノブ!!! 握手はいいからドアノブ返せよッ!!!」
「ひえっ!?」

 あまりに突然のことで、私は反射的に肩をすくめて身を縮こませた。そんな私の左手には、先ほどドアから取れたドアノブが握りしめられている。提督はそれを私から奪い去り、壊れてしまった接合面をしげしげと見つめる。

「あーあー……また接着しなきゃいけないじゃないか……」
「ふーん……提督も大変だなー」
「ドアの惨事は100パーセントお前が原因だけどな」

 提督は自分の腰のポケットから瞬間接着剤を取り出し、それの蓋を開けて、ドアノブの接合面におもむろに塗り始める。準備がいいことに私が関心しているその横で、提督はドアノブが外れたドアに、今しがた接着剤を塗ったドアノブの接合面をぺたりと貼り付け、そのままそれを支え始めた。

「それでいいのか?」
「中の金具さえガッチリ噛みあえばイケる」

 しばらく待った後、ドアノブは無事接着されたようだ。提督がガチャガチャとドアノブを回す。反対側のドアノブが連動して回り、ドアの留具も無事動いた。修理が完了したようだ。

「すげー! 提督すげー!!」
「その他人事みたいな感嘆符はやめてもらっていいか?」

 続いて提督は『ふんっ』と声を上げてドアを持ち上げると、ドアの蝶番を器用に合わせ始めた。重いドアを器用に動かし、蝶番をキチンと合わせるのはかなり大変なようで、提督は時々『んっく……』と苦しそうな声をあげながら、顔を真っ赤にして必死に蝶番を合わせている。

「ていとくー。手伝おっか?」
「いら……んッ!!」

 ムキになって一人でやり遂げようとする提督を、『やっぱりゆきおの父ちゃんなんだなぁ』とぼんやりと思いつつ、提督の修理の様子を眺める。しばらく挌闘の後、ドアの修理は無事に完了。最後の確認で、提督がドアノブを回し、ドアを開けて、閉じる。ドアは問題なく稼働した。

「……これでよし」
「すげー!! 提督!! ほんとにすげー!!!」
「だからその他人事みたいな称賛はやめろ」

 私の本気の称賛を、提督は死んだ魚のような眼差しで受け止めていた。その失礼さに私は若干イラッとしたが、元は私が悪いのだ。提督がそんな目をする気持ちも分かる。

「……ぁあそういえば」
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