巻ノ九十九 さらば都その十
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「そして茶なりあの方がよく吸われる煙草の煙管の吸い口なりにじゃ」
「毒を入れるか塗っておけば」
「それで、ですな」
「それで終わる」
まさにそれだけでというのだ。
「しかも無事に帰られる」
「そこまでおわかりですか」
「あの城のことを」
「そうじゃ、茶々様はおろかお拾殿もじゃ」
名目上の主である秀頼もというのだ。
「実に楽にことを為せる、若しお拾様がおられなくなれば」
「豊臣家は終わりですな」
「もう豊臣家はお拾様お一人だけ」
「そうした状況ですので」
「それこそですな」
「それだけで終わる」
茶々か秀頼を暗殺すればというのだ。
「何も苦労もなしに済む」
「如何に堅城といえども」
「あの大坂城でもですな」
「半蔵様や我等なら楽に忍び込めて」
「そして、ですな」
「ことは終わる、しかしわしは大御所様の命で動くしじゃ」
それにというのだ。
「大御所様はお命じになられぬ」
「だからですな」
「我等も動いてはならぬ」
「そうなのですな」
「御主達ならわかる筈じゃ」
伊賀者達を己の下で束ねる十二人の上忍にして股肱の者達である彼等というのだ。
「わしの考えがな」
「はい、実に」
「よくわかりました」
「それではです」
「我等は決して」
「そうしてもらう、軽挙はならぬ」
例え何があろうとも、という言葉だった。
「天下は戦にならずにな」
「穏やかに戦の世が終わる」
「このままですな」
「だからこそ軽挙を慎み」
「見張るだけですか」
「真田殿も然りじゃ、願わくばこのままでいってもらいたい」
平穏なままでというのだ。
こう話してだ、服部は今はその場を後にした。そのうえで十二神将達に見張りを任せて今は彼が家康に伝えられた任に赴いた。彼が果たすべき次の任に。
巻ノ九十九 完
2017・3・15
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