第65話<星空とベンチ>
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分、私の身体が隣の日向に密着した。
「暑苦しくて済まないな」
私は、反射的に隣の彼女に声をかけた。
微妙に避けられるか? ……と思ったけど。
「……いえ」
意外に大丈夫そうだ。
私は彼女の体の温もりを感じながら、そういえば、この夏は日向とも、いろいろあったな、と思っていた。
「はぁ」
ため息混じりに私の反対側に鎮座した山城さんが、ゆっくりと髪をかき上げた(ギシッ)。ちょっと大人の色気が……。
すると、このタイミングを量ったかのように降って湧いた金剛と比叡。
「oh! テイトクは隅に置けないネ!」
「ホントです!」
どこかのデュエット姉妹か? お前らは……しかし目立つよな、この二人は。
「ええ? 何デスか? 似合ってますか?」
私の思考を読み取ったかの如くに私たちの目の前で赤系統の浴衣を着た金剛が一回転をした。
「確かに……」
なかなか綺麗だ。
「え? よく聞こえないよ!」
ワザとらしく耳に手を当てて笑う金剛。
「あ……」
と言いながら慌てて比叡もぎこちなく一回転した。
だが草履が引っかかったのか、ちょっとよろけた。直ぐに金剛に支えられて「えへっ」と舌を出す。
その光景を青葉が写真に撮っているから、この場は嫌でも目立つ。
周りの通行人たちも思わず振り返っていた。
金剛が腰に手を当ててウインクをしながら、なおも私をからかう。
「神戸のテイトクは色男だったけどネ。でも美保のテイトクも負けてないヨ。もっと自信持つネ!」
「何の自信だよ?」
思わず反論する……ますます分からん。
ただ私の左右に戦艦級の艦娘が密着していると、さすがに暑苦しい。
かといって今すぐに私が動けば、せっかく座った二人に悪い気もする。
ちなみに私に密着している日向は引き締まった筋肉質。その向こうの山城さんは至近距離から見ると意外と、ふくよかな感じで。
……いかんな、私は何を観察しているんだろうか?
そのとき、突然夜空にヒューと言う音を立てて花火が上がり始める。
公園で踊っていた人たちも、しばし踊りを止めて花火に見とれる。
櫓太鼓の音は花火に負けじと続いていた。
境港は島根半島が直ぐ近くにあるから花火の反響音も他の地域では聞くことの無い独特の残響音になる。
「ああ、これは小さい頃に良く聞いた花火の音だなあ……」
ふと懐かしい思いがした。
何となく隣から「そうですか?」という呟きが聞こえたような気がしたが花火の音にかき消された。
盆踊りも、いよいよクライマックスだ。
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