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俺の涼風 ぼくと涼風
7. 二人で一人(2)
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ともにドアが床に倒れていたが気にしない。それよりも。

「ゆきお!!!」

 ゆきおの名を呼び、部屋を見回す。長ソファの横に立っていて、壊れたドアを見て青ざめてる、上着を脱いだワイシャツ姿の提督と……提督の机の上でパソコンを叩いている大淀さん……そして。

「……ぁあ、おかえり涼風」

 ゆきおがいた。長ソファに寝転んで、頭に冷えピタみたいなものを貼って、提督の上着を掛け布団代わりにしているゆきおがいた。

 ゆきおが私の姿を見るなり、ゆっくりと上体を起こす。少し顔色が悪いようにもみえるけど、ゆきおは私に、ニッコリと、柔らかく優しい笑顔を向けてくれた。

「作戦成功おめでと」

 今の私には、何よりも嬉しい言葉だった。提督と大淀さんが同じ部屋にいたが、私は気にせず、全力でゆきおの元まで走り、華奢で細っこくて、でも温かく優しい、ゆきおの身体に抱きついた。

「お、ぉお?」
「ゆきおー!!! あたい出来たよ!! ゆきおのおかげだ! ゆきおのおかげで、ちゃんと戦えたよ!!!」

 私が抱きついた途端、ゆきおの小さい身体がさらに縮こまる。ゆきおの両腕がカタカタと震えているが気にしない。私はゆきおに抱きつきたいんだ。私は気にせずゆきおにしがみついた。

 その後、一度手を離し、ゆきおの顔を見た。作戦中、あんなに凛々しい声をあげていたゆきおは、今は顔を真っ赤にして、目を白黒させている。さっきの顔色の悪さはウソだったのかと思うほど、今はまっかっかだ。

「ん? どしたー? ゆきおー?」
「ちょ……すずかぜ……は、はずかしい……」
「てやんでいっ! なにが恥ずかしいだっ!!」
「でも……」
「あたいはうれしいんだ! ゆきおがあたいを助けてくれた! ゆきおのおかげで、あたいは戦える艦娘に戻れたんだ!!」

 目をぐるぐるさせて戸惑っているゆきおに、私はもう一度、しっかりと抱きついた。今度はゆきおの首に手を回して、ゆきおのまっかっかなほっぺたに、私のほっぺたをぴったりと重ねる。ゆきおとくっついた私のほっぺたが、ぽかぽかと暖かい。

 この温かさだ。ゆきおのこの温かさが、私をあの冷たい呪いから救ってくれたんだ。何よりも優しいゆきおの温かさが、私を救ってくれたんだ。私の胸に、心地いい温かさが染み入っていく。

 ゆきおが震える両手で、私の両肩に触れてくれる。おかげでノースリーブで肌が出ている私の両肩が暖かい。ゆきおの、小さくて暖かい両手が、私の肩にぬくもりを伝えてくれる。

「……涼風」
「ん?」
「ぼくは何もしてないよ。がんばったのは涼風だ。僕は……声をかけただけだから」

 ほっぺたを一度離し、再びゆきおの顔を見た。相変わらずゆきおの顔は真っ赤っかだけど、私にカーディガンをはおらせてくれた時と同じ、優
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