7. 二人で一人(2)
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せて!!』とか、色々声が聞こえてる。でも気にしない。
『ごめん涼風!! 予測進路より気持ち前に!!』
「うんッ!!」
たとえ少し間を開けても、ゆきおはこうやって、必ず私に声を聞かせてくれるから。
水面を見た。私がばらまくべき、魚雷の射線がうっすらと見えた気がした。私が思っていた射線よりもだいぶ前。きっとこの射線が、ゆきおが私に教えてくれた、正しい直撃ルート。
「涼風! 9時方向ッ!!」
不意に摩耶姉ちゃんの怒声が飛んだ。慌てて左を見る。もう一体の駆逐イ級が、私に砲塔を向けていた。
「しまッ……」
イ級の砲塔から私に向かう射線が見えた。まっすぐに私に向かっていた射線は次の瞬間、イ級の爆発とともに、フッと消えてなくなった。
「!?」
慌てて後ろを振り返る。榛名姉ちゃんの砲塔がこっちを向いていた。榛名姉ちゃんが私をフォローしてくれた。榛名姉ちゃんが、私を助けてくれた。
「撃って下さい!!!」
そして榛名姉ちゃんが、私を叱咤してくれた。その時の榛名姉ちゃんの眼差しは、かつて私と仲良くしてくれてた時と同じだった。
「うんッ!!」
改めて、私は残り一体の駆逐イ級に背中を向けた。砲撃と同じく、あの日以来の雷撃だ。
『いけぇぇええすずかぜぇぇえええ!!!』
「もってけドロボォォォオおお!!!」
ゆきおの掛け声を受け、私は意を決し、イ級に向けて、背中の魚雷を発射した。放たれた魚雷は、ゆきおが指示し、私の目に映った射線の通りに、水面下を走っていった。
無事に敵艦隊を掃討した私たちは、そのまま鎮守府まで戻ってきた。我慢しきれない私は、帰投してすぐに主機と艤装を脱ぎ捨て、そのまま執務室へと走る。
「おい涼風! どこいくんだよ!!」
「執務室!! ゆきおにありがとうって言うんだ!!」
『ったく……』と呆れる摩耶姉ちゃんと、いつもと比べて心持ち表情が柔らかい榛名姉ちゃんをその場に残し、私はひたすら執務室へと続く廊下を駆ける。
「ゆきお……ゆきお……!」
一秒でも早く、少しでも早くゆきおにお礼が言いたい。私の身体にこびりついていたノムラの呪いを、キレイに洗い流してくれたゆきおに、ありがとうを伝えたい。突きあたりを曲がって……食堂の前を突っ切って……執務室の前のドアまで来た。
ドアをノックしなきゃと思ったけれど、それすらまどろっこしい。ゆきおの顔を早く見たい。息切れもマナーも気にせず、ドアノブに勢い良く手をかけそれをひねると、全力でドアを引き開いた。
さっきの私の砲撃音にも似た『ドカン!!』という音を響かせ、ドアが開いた。勢い良く開かれたドアは壁にぶち当たり、ガツンという音を立てていた。蝶番が外れたようでガタンという音と
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