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俺の涼風 ぼくと涼風
7. 二人で一人(2)
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思い出した。この温かさとこの匂いは、ゆきおだ。この優しさは、笑顔のゆきおだ。

「……ゆきお?」

 ゆきおの名をつぶやき、目を開いた。その瞬間、パリンとガラスが割れる音が聞こえ、ノムラの幻が砕けた。空の色が戻り、海は青々と輝いていた。私の目の前に、あの日ゆきおと共に見た、どこまでも続く水平線が戻った。

『動いて涼風! 避けてッ!!!』

 通信機を介して、私の耳にゆきおの声が届いた。私の心が今、ゆきおの声に気付いた。

「ゆきお!?」
『すずかぜっ!! 避けて!!』
「なんでゆきおが!?」
『いいから今は動いて!! 魚雷来てるから早くッ!!!』

 ゆきおに促され、敵の魚雷が自分に向かって直進していることを思い出した。前を向く。白い線が3本、私に向かってまっすぐ伸びている。右手を握り込む。……私の身体が動く。動かせる。

 即座に主機を動かし、私は身体を翻して射線軸を外した。魚雷はすんでのところで私をすり抜け、私のはるか後方まで通り過ぎていく。

「ホッ……」

 摩耶姉ちゃんが安堵のため息をし、そして主砲を撃った。摩耶姉ちゃんの砲弾は正確に雷巡チ級にまで届き、そしてそれを撃沈していた。

 敵が撃沈されたのを見て、私は改めて、自分の右手の平を開き、ジッと見つめる。右手を握り、開く。数回繰り返し、自分の身体が自由に動くことを確認した。

「動く……動かせる……」
『涼風ッ!! 砲撃!!』

 再びゆきおの声が響いた。私は再び前を向く。駆逐イ級の砲塔から煙が上がっていた。砲弾が飛んでくる音が聞こえる。着弾寸前で身をかがめた。私の髪の毛先をほんの少しだけかすめとり、砲弾は私のはるか後方に着弾した。

 左手に持つ主砲を構えた。摩耶姉ちゃんや榛名姉ちゃんの主砲と比べると口径は小さいけど、相手が駆逐イ級なら、充分一撃で倒せる。標準を合わせる。相手はまっすぐこちらに向かってきている。当てるのは容易い。

「いっけぇぇええええ!!!」

 私は、あの日以来、はじめて主砲の引き金をひいた。久々の砲撃は私の身体にビリビリとした衝撃を与え、轟音とともに砲弾を相手に向けて飛ばしていた。私が発射した砲弾はまっすぐに駆逐イ級に着弾し、一撃で撃沈していた。

「ふぅっ……」
「まだだ涼風ッ!!」

 今度は摩耶姉ちゃんの声が飛ぶ。敵はあともう二体の駆逐イ級。相手は撤退する気はないらしく、一体はこちらにすべての主砲を向けるべく、私から見て左方向に舵を切り始めたようだった。私の頭の中で、キンと乾いた音が鳴る。私は駆逐イ級に背中を向けた。

『すずかぜ! 魚雷ッ!!』
「分かった!!」

 ゆきおの指示は読めていた。無線の向こう側は大騒ぎになってるらしく、提督の『部屋に戻れ!!』とか、ゆきおの『やら
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