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俺の涼風 ぼくと涼風
7. 二人で一人(2)
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 どれだけ距離が離れようとも……どれだけ時が経とうとも、この男の醜悪な愛情から、逃げることが出来ない。

 私は今、この男から逃れることを、諦めた。

 摩耶姉ちゃんと共に、今のこの鎮守府で、優しく朗らかな提督と、優しく受け入れてくれたみんなと、一緒にずっと暮らしていけば、いつの日か、このノムラ提督の呪縛から解き放たれると思っていた。

 でも、どれだけの日々を過ごそうと、私からノムラの歪んだ愛情が剥がれ落ちることはなかった。私の心は今、この場での轟沈を望み始めた。

「ちくしょっ!! 涼風ッ!!!」

 ずっとずっと離れた場所から、摩耶姉ちゃんの叫びが聞こえた。ごめんなさい摩耶姉ちゃん。もう沈みたいです。沈むことでしか、この男から逃れることは出来ないみたいです。

『涼風動け!! 逃げろ!!! 涼風ッ!!!』

 提督ごめんなさい……せっかくあなたに助けてもらったのに……でももう沈みたいです。もうイヤです。この男に、こんなふうに愛されたくはないです。もう沈ませて下さい。ごめんなさい。

「涼風ちゃん!! だめッ!!!」

 榛名姉ちゃんごめんなさい。金剛さんと比叡さんを沈めてごめんなさい。私はもう沈みます。だからごめんなさい。最後に、昔の呼び名で呼んでくれてうれしかったです。

――ずっと一緒だよぉ……俺の、俺だけの涼風ぇぇぇえええ

 嘔吐を催す呼気を吐き散らしながら、私をただひたすらに抱きしめている、ノムラの身体の向こう側が、透けて見えた。私に向かってまっすぐに進んでくる魚雷の痕跡が見える。あれか。あれが私の願いを聞き届けてくれるのか。あれが、私をあの日のみんなのように砕いて、そして沈めてくれるのか。

――そんな涼風がさ。出来ないわけないよ。僕は、そう思ってる

 ゆきおの声を思い出した。もう聞くことが出来ない、優しくて柔らかい、大好きなゆきおの声。でも、もう聞く機会はない。私はもう沈む。

『すずかぜっ!!』

 幻聴かな。ゆきおの声が聞こえた気がした。私はよほどゆきおに会いたいらしい。でも、幻聴でも聞けてよかった。私の胸が、ほんの少し温まった。魚雷の白い痕跡は、止まらず私に向かって直進している。私は目を閉じ、その瞬間を待った。

 その直後、私の肩に、優しく暖かい、ふわりとした感触を感じた。

 私は目を閉じたまま、どこか覚えがある、この感触を必死に思い出した。この、とても暖かい感触……ノムラの冷たい抱擁すらかき消す、このふんわりと優しい感触は何だろう。この、心がぽかぽかと心地いい、ほのかな消毒薬の香りをまとった、このあたたかいものは何だろう。

――それ羽織りなよ。暖かいよ?

 ……思い出した。これは、ゆきおが昨日、私の肩にかけてくれたカーディガンだ。鮮明に
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