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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第二十四話 幼き名将
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に扱えというのか?」

 秀次を見る秀吉の目は冷たかった。秀次は何も言えずに沈黙し秀吉から視線を逸らした。秀次の言い分は最もであるが、その価値観は儒学に根ざしている。秀次の考えに沿った方が波風を立てずに済むことは確かだ。俺も無用な恨みを買いたくない。秀次に恩を売ってやることにする。

「関白殿下、中納言様の仰ることも一理ございます。『侍従』の官職を褒美にいただけませんでしょうか?」

 秀保が秀長の後継者になっていないなら、彼の官職は「侍従」だ。秀吉と秀次の両方の顔を立てる意味で「侍従」の官職を受けることにする。これで俺も公家の仲間入りということだ。

「謙虚なやつだ。良かろう。侍従に任じる」

 秀吉は俺の意見に感心した様子だった。

「秀定、何か欲しいものはあるか? 言ってみるがいい」

 欲しいものか。今後のことを考えれば人材だろう。
 そう言えば。

「一つございます」
「申してみよ」
「藤堂宮内少輔を私の家臣にいただけませんでしょうか?」

 俺は藤堂高吉の名前を出した。藤堂高吉は豊臣秀長が養子にするほど惚れ込んだ人材だ。そして、その武勇は折り紙つきだ。今、彼は藤堂高虎の養子になっているはずだ。大和大納言家の養子になった俺が藤堂高吉を家臣として迎えることは可能だと思う。

「藤堂宮内少輔だと?」

 秀吉は俺の言葉を訝しんだ。

「藤堂佐渡守の養子でございます」

 秀吉は顎髭をいじり思案していた。

「いいだろう。佐渡守には儂が話をつけてやる」
「関白殿下、ありがとうございます」
「人材一人で満足なのか? 遠慮せずともいいのだぞ」
「有能な人材は万石の領地を得るに勝ります」
「いいよるわ」

 秀吉は愉快そうに俺を見た。彼は俺を見ながら思い出したように扇子で膝を叩いた。

「もう一つ目出度い話がある。秀定、お前の許嫁が決まった。相手は信長公の六女・咲姫(さきひめ)だ。蒲生侍従が咲姫を養女として、お前の正室として嫁がせたいと言っている。これ程の良縁はあるまい」

 秀吉は俺を凝視する。彼は縁談話を受けろと言っているんだろう。

「謹んでお受けします」

 ここで拒否しても無意味だ。秀吉は公言している以上、俺に拒否権はない。それに俺は正真正銘の豊臣一門に組み居られてしまった。豊臣家当主・秀吉の命令には従うしかない。
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