第一章 天下統一編
第二十四話 幼き名将
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吉は意味深な笑みを浮かべた。嫌な笑顔。この二人は明らかに示し合わせている。
「秀次、俊定は剛毅よな。城攻めの前に宴会とはな」
秀吉は笑いながら秀次に話を振った。俺を睨む秀次は突然秀吉に話を振られ慌てていた。秀吉は秀次を冷たい目で凝視している。
「いや。凄いです。本当に凄いです」
秀次は不自然な口調で俺を誉めた。気が動転しているんだろう。秀吉は秀次の賛辞の言葉に納得したのか視線を織田信雄に向ける。
「内大臣、儂の甥は歳が十二とはとても思えない。そう思わないか?」
秀吉は冷酷な目で織田信雄を見ていた。織田信雄は表情を固めた。
「まことに凄い。約束通り三日で大手門と砦一つを落とすとは凄い」
織田信雄は感情を必死に抑えつけているのか棒読みで俺を誉めた。
秀次と織田信雄の態度が不自然すぎる。
「お前は韮山城を落とした。韮山城は北条家の象徴といえる城だ。それを寡兵で攻め落とし城主を降伏させた。俊定、お前に褒美を与えたいと思う」
秀吉は俺に話し終えると立ち上がった。
「皆々、ここで儂は宣言する」
「関白殿下、お待ちください!」
秀次が慌てて秀吉を制止しようとした。
「控えよ! 秀次、これは豊臣家当主である儂の決定だ。お前が異論を挟むことは許さん」
秀吉は凄味の籠もった厳しい表情で秀次を黙らせた。どういうことなんだ。秀次が凄く動揺している。俺が蒲生氏郷と縁続きになることが、そんなに困ることなのか。背筋に寒気を感じた。秀吉は何を考えている。俺に関係して秀次が困ることはなんだ。
分からない。
何なんだ?
「小出吉政と小出俊定の養子関係を解消する。木下俊定は儂の弟・秀長の養子とする。秀長の後継者は今まで通り秀保で変わりない。正式な儀礼は京に戻ってから執り行う」
俺は秀吉の衝撃の宣言に言葉を失い呆然としていた。
やばすぎる。秀長の養子だと。お先真っ暗だ。頭の中が真っ白になる。
「俊定、韮山城攻めの功績により儂の『秀』の一字を与える。今から『秀定』と名乗るのだ」
「関白殿下、御礼を申し上げます」
俺は動揺していたが必死で理性を保ち秀吉に礼を言った。俺はどうすればいい。もし、関ヶ原の戦いが起これば、俺が東軍につくことを徳川家康は許さないだろう。俺は徳川家康が潰すべき豊臣一門となりえる。それどころか秀次事件で粛正される可能性も十分にあり得る。
「秀定、お前に官位を与える。秀長の子が諸大夫では格好がつかん」
秀吉は顎髭をいじりながら思案していた。
「従四位下、侍従、左近衛権少将」
「お待ちください。相模守は秀保の弟になる身、兄より高い官位を与えては示しがつきません」
「命を張り手柄を上げた秀定と、京で遊興にふける秀保を同列
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