第62話『看病』
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配してだろう、智乃が部屋に入ってくる。もちろん結月目当てなので、晴登が部屋に居たことには驚いたはずだ。
しかし、状況が状況である。今の晴登の首には、結月のか細い腕がしっかりと巻き付いているのだ。
「あ、その……失礼しました」ガチャ
「待って閉めないで!?」
寂しそうに智乃は扉を閉めていくので、慌てて引き止める。智乃が残ってくれないと、この先どうなるかわからない。
「いや、私はいいから…ね」
「いや違うんだ! これには訳が──」
「ボクのハルトはチノには渡さなーい」
「…! お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなの! 結月お姉ちゃんには渡さない!」
「なにこれどういう展開?!」
状況がカオスになってくる。智乃が晴登の腕を引っ張るのに対して、結月は晴登の首を引っ張る。言わずもがな、二つの方向に身体が引っ張られる訳で痛い。
「ハルトはボクの!」グイ
「お兄ちゃんは私の!」グイ
「いい加減にしろぉぉ!!!」
──晴登は、咆哮する。
*
「行ってきまーす!」ガチャ
「行ってらっしゃい」
あの一喝から一時間。智乃が学校へと向かう時間となる。
玄関で手を振る晴登は、いつもと違う生活ということで新鮮な気分を感じた。
「さて、戻るか」
階段を上がって、結月の元へと戻る。看病と言っても、食事以外は特にすることもないので、正直暇だ。
「結月、体調は平気か?」
「そうだね。少し怠いけど、落ち着いてるかな」
「じゃあ一日安静にしてれば大丈夫だな」
「……!」
そう晴登が言った瞬間、結月の表情が変わる。具体的には、驚きと恐怖が読み取れた。
「まだ風邪のままでいい。ハルトにチヤホヤされたい・・・」
「願望だだ漏れだな。次からは学校に行くことにしよう」
「ハルトと一緒じゃなきゃ嫌だっ!」
「留守番ぐらいしてくれるよね!?」
結月の将来性を心配して、晴登はため息をつく。ここまで依存されると、いつか独り立ちできるのだろうか。いやこの際、一生自分が面倒を見るのも・・・って、さすがに今考えることじゃないな。
「それじゃ俺は智乃の部屋で勉強するから、大人しくしておくんだぞ?」
「ここではしないの?」
「今まで居てなんだが、風邪を移されても困るからな」
「うぅ……」
どうやらその一言には結月は弱かったらしい。自分のせいで迷惑をかけることになるからだろう。随分と泣きそうな顔をしているが、これで挫ける晴登ではない。いつまでも甘やかしてはいけないのだ。
「……俺は親か」
*
「──
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