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とある3年4組の卑怯者
10 土産
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ちとも別れ、藤木は家に着いた。

「ただいま」 
「お帰り、茂」
 母が出迎えた。
「あ、お土産にこれ買ってきたんだ」
「どれどれ、へえ、どら焼きじゃない、いいの買ったわね、父さんもきっと喜ぶわ」
 そして父も、「こりゃ美味そうじゃないか」と言ってくれた。
 藤木家は夕食の後、そのどら焼きを食べることにした。父は粒餡、母と息子は漉し餡を食べ、その味はかなりのモノだった。

 翌日、藤木は学校へ行く準備をした。笹山とリリィに渡すお土産をランドセルに入れて。
「行ってきます」
 藤木は張り切って学校に行った。
 教室に入ったときにはまだ二人とも来ていなかった。藤木は例のモノは机の中にしまった。
 その時、永沢が教室に入ってきた。
「やあ、藤木君、おはよう」
「あ、永沢君、おはよう」
 藤木は挨拶を返した。永沢に自分がプレゼントをあげる姿を見られると何か冷やかされるかもしれない、と不安を感じた。
「藤木君、君もしかして、僕に何か見つかるとまずいものがあるんじゃないのかい?」
「え!?!」
 あっさりと感づかれた。
「そんなことないよ!」
「ふうん」
 そんな時、笹山が入ってきた。
(笹山さんが来た!)
 藤木は永沢を気にせず、机の中からお土産を持って思い切って笹山のところへ向かった。
「笹山さん!」
「あ、藤木君、おはよう、どうしたの?」
「あの、昨日デパートに行って来てね、これ買ってきたんだ」
 藤木は紙袋の中からあの消しゴムセットを取り出し、笹山に差し出した。
「うわあ、これケーキの形をした消しゴム!?」
「うん、笹山さん、お菓子好きかなって思って・・・」
「ありがとう、嬉しいわ」
 笹山は笑顔でお礼を言った。と、その時・・・。
「何!?ケーキだって!?おい、藤木、俺にも食わせてくれよ!!」
 小杉がいきなり飛び込んできた。
「違うよ、ケーキじゃないよ、小杉君!」
「そうよ、これはケーキの形の消しゴムよ!」
「ちぇ、ケーキが食えると思ったのになあ。でも上手そうだな、くれよ」
「これは君にじゃなくて、笹山さんにあげたものだよ」
「そうよ、折角藤木君がくれたんだもん」
「そういうこと言わずにさあ」
 図々しい態度に永沢が出てきた。
「小杉君、そんなに欲しかったら君も同じのを買えばいいじゃないか。横取りしたら君は泥棒だぞ。藤木君よりもずっと卑怯だぞ」
 永沢が小杉を睨む。
「ちぇ、分かったよ」
 小杉は残念そうに去った。
「あ、ありがとう、永沢君」
 藤木が永沢に礼を言った。
「別に僕は君を助けようと思ったんじゃないよ」
「え・・・?」
 永沢はそう言って去った。
「藤木君、ありがとうね」
「うん・・・」
(笹山さんが喜んでくれている・・・。良かったなあ)

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