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俺の涼風 ぼくと涼風
6. 二人で一人(1)
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 気のせいか、ゆきおのほっぺたが少しだけ、赤くなった気がした。カーディガンを脱いで肌が出ている私の肩に、窓からの風が冷たく感じる。でも胸が温かくて、あまり寒いと思わない。

「なー。ゆきお?」
「ん?」
「……あたいさ。やれっかな?」
「やれるよ」
「考えただけでも怖いのに?」
「大丈夫」

 ゆきおの『大丈夫』という言葉が、私の胸の中に静かに、じんわりと温かく、広がっていった。

「怖くて怖くて、動けなかったのに?」

 ゆきおの声が聞きたくて……ゆきおの優しい声に『大丈夫』と言って欲しくて、私はもう一度、あえてゆきおに問いかけた。ゆきおの肩をキュッと握る。華奢で弱々しいはずのゆきおの肩が、私の手をしっかりと受け止めてくれた。

「大丈夫だよ。……だってさ」

 次のゆきおが発した言葉は、いつの日か、私がゆきおに言い放った言葉だった。ゆきおは私の言葉で、私のことを勇気づけてくれた。

「涼風はさ。自分を誰だと思ってるの?」
「……?」
「改白露型の駆逐艦だよ?」
「……」
「そんな涼風がさ。出来ないわけないよ。僕は、そう思ってる」

 そう言って、いつもの朗らかな微笑みを向けるゆきおは、何よりも、誰よりも壊れやすく、でもとても優しい存在に見えた。

 私は明日、出撃することに決めた。?


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