6. 二人で一人(1)
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ンが優しくなびいている。
「ほ、ほら! 窓があいてっからさ! ちょっと寒くなっちゃったんだよ!」
「そうなの?」
「うん! ほら、あたいって、手袋はつけてるけどノースリーブだろ? だからさ」
たなびくカーテンを見て、なんとか思いついたウソ。このことにゆきおが気付くかどうかは分からないが……これ以上追求されて、ゆきおに昔のことを知られるのはイヤだ……お願いします。どうかもうこれ以上、私の過去に近づかないで下さい。
「涼風」
「ん? ど、どした?」
「ちょっとしゃがんで」
この、唐突で予測できなかったゆきおの要望は、私の思考をストップさせた。
「なんで?」
「いいから」
「なんでだよっ」
「いいからしゃがむのっ」
ストップした頭の回転をなんとか取り戻したが、意味もなく抵抗してしまうあたり、私の頭はまだ動作不良を起こしたままのようだ。でもゆきおの妙な真剣味に呑まれ、私は頭に疑問符をいっぱい浮かべつつ、腰を落としてその場にしゃがんだ。私の目線が、ベッドの上で上体だけ起こしているゆきおの目線よりも、かなり低くなった。
「ほい。しゃがんだぞ?」
ゆきおの顔を見ようとすると、かなり見あげなければならない。それがまたけっこうな首の負担になってしまうため、私はしばらくうつむくことにした。
「ありがと。ちょっと待っててね」
俯いているため、ゆきおがどんな表情をしてるか分からない。でもゆきおは、『よっ……』と声を上げて、何かをごそごそやってるようだった。
そして次の瞬間。
「はい」
私の両肩に、柔らかく温かい、ふわふわとした感触のものがかけられた。途端に私の鼻に、消毒薬の匂いが……いつもゆきおの身体から漂う、消毒薬の香りが届く。
「それ羽織りなよ。暖かいよ?」
ゆきおを見上げた。いつもと違う、いたずらっ子のような笑顔を浮かべたゆきおが、そこにいた。ニシシと微笑むゆきおの肩には、さっきまで羽織っていたはずのカーディガンが見当たらない。
自分の肩に触れる。ふわっと柔らかい、温かい感触。ふわふわと心地いい手触りのものが、私の肩にかけられていた。さっきまでゆきおが羽織っていたカーディガンが今、私の肩に羽織られていた。
「え……これ……」
「暖かいでしょ」
「ゆきおは……寒く……ないの?」
「僕は大丈夫。それよりも涼風だよ。ノースリーブで寒そう。見てる僕が風邪ひいちゃう」
「……」
さっきまであんなに震えていた私の身体が、今は信じられないほど暖かい。両手でゆきおのカーディガンに触れる。ふわふわと心地いい感触のカーディガンは、まるでゆきお本人のようにやわらかく、そして優しい。
私は再び俯いた。ゆきおの顔を見ていられない。ゆきおの優しさが
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